ひょーりいったい

第5話

「っだ～！水族館、楽しかったけど疲れたな…」

「っすね～お腹いっぱい食べ過ぎちゃったからっすかね！美味しかったけどお腹いっぱい…」

「ああ…確かに……パフェもでかかったもんなぁ…」

あーんする！と意気込んでいたペンギンパフェ、まぁまぁのデカさであーんされるのはまだ、良かったのだがてこてこと遊びに来た子供にあーんのシーンを目撃され「まま！おにいしゃんたちあーんしてゆ！」と指を指されて大声で呼ばれたのは記憶に新しい。あんなビシリと指を指されては逃れられるものも逃れられない。

チクチクと視線を浴びながらもパフェを食べきり、その後もまぁチクチクと見られながら水族館を回ったのだった。まぁ、楽しかったから良いんだけど、チクチクデートを監視されてる感じであんまり良くなかった。

ただ水族館を動き回るだけではなく、イルカショーを見に行ってビショビショになる子供達を見て笑ったりした。悪趣味に聞こえるかもしれないが、微笑ましい方の笑うだ。

まぁ最後にお土産コーナーにも行ったし、疲れるのは仕方ない。クソでかいぬいぐるみを買おうとした天使を止めるのも体力を使った。

「この後…どこ行きたいとかあります？焼肉屋さんまでちょっと時間ありそうっす」

「あるか？移動時間もあるだろ、移動してみて様子見するぞ」

「あ、そうか。はーい、焼肉屋さんの近く遊べる場所があるといいなぁ…」

「遊べる場所って…お前ゲーセンとかいかん口だろ」

「行かないっすねぇ…本屋さんとか、カフェ行きたいなぁ～」

なんてのんびりしたこと言ってやがる。まぁ確かにカフェ、行きたい気持ちは分からんでもないがカフェなんて行ったら確実に予約時間に遅れるだろうし、腹に入らん。行きたがったら却下しなきゃな。

「はぁ、ほら、電車乗るぞー」

「は～い、夕方なのに暑いっすねぇ……朝とあんまり気温変わらないっす」

「一理ある、多少涼しいはずなんだけどな…夜は涼しいはずだが…この調子じゃ暑いかもな」

「えぇ～！クーラー使えないのにきついっす……」

ぴええ…と泣き真似をする天使に少しだけ同意する、クーラーを久しぶりにつけたら故障していて、修理屋を頼んでいる所なのだ。周りの皆も一緒なのか予約したのは1週間前だがまだ来ない。というか予約が一杯で難しいと言われた。俺らを熱中症で殺す気なのだと思う。ボロ臭い扇風機じゃこの夏を乗り切る事はできない。

俺らは一緒の家に住んでいる、と言っても名目上はルームシェアだ。同性同士では結婚が出来ないから。

家賃は半々、家の広さは上々。まぁルームシェアの最初の頃は新婚夫婦並みにイチャイチャとしていた。……いやしてない、してないな。

「はあ～また今日もくっついて寝られないのか……」

「暑苦しいんだから冬以外くっつかんでほしい」

「ええー！そんなぁ………」

ぐすんと泣くふりをする天使を軽く無視しながら焼肉屋へと向かう道順を調べる。水族館から3駅先の駅前の場所の様だ。なかなか良い焼き肉なそうで。

………飯を食った後に直ぐに焼肉なんて食えるか？なんて思ってはいけない。ちびちび食うのが焼肉は楽しいので大丈夫だろうと考えているだけで、天使の胃の容量にはついていけない。のは内緒だ。

「あ～…ちょっと時間余りそうだな。駅前つーことは…この電車は電子板のやつか？」

「最近の電子板って便利っすよね～分数記載してくれるってすごい。んーと…10分くらいでつきますね」

「んで歩いて5分。ってことは10分くらいだから30分くらい暇だわな」

「うえ～！思ったより多い…？いや、お店とかに入ったら短いっすよね～どこかお散歩とかにしておきます？」

「駅前だしな、適当な入って出れる店くらいあるだろ、適当に入るか」

そうっすね～とのほほんと返してくる天使を見ながら電車の出発する音を聞く。ピピピと鳴っていて出発することを全体的に伝えている音はあまり心地が良いものとは思えないのだが、これは危機感を与えるにいい音だとは思う。

「じゃあやっぱりカフェがいいっす！」

「いや、俺の候補は本屋だな」

「本屋さんは海真珠さんが悩み始めると長くなるから嫌っす」

「カフェで腹が膨れて焼肉が食えなくなるから拒否する」

「カフェでどんだけ食べるつもりなんですか？飲み物一服くらいでいいんすよ」

そうぎゃあぎゃあと言い合いながらも最終的にはじゃんけんをして決める事にした。

「いいか、じゃんけんでも負けたら俺は不機嫌になる」

「どんな脅しなんですか…！？じゃんけんなんて運なんですからそうやって言わないで下さい…！大人気ないです…！！」

大人気ないと言われながらも知るか、カフェに入ったら一服して帰りたくなってしまうに決まっている。カフェなんて一休みに入って帰るか。と言う場所だ。

「えーい！運さえも味方につけるっす！最初はグー！じゃんけん」

「「ぽん！」」