最終話 クソレビュアーの俺が美少女作家を叩いた結果
……。
「どう、かな?」
あとがきを読み終え、無言で固まる俺を上目遣いで覗き込んでくる綾上。
躊躇いつつも、口を開いた。
「……あのさ、綾上」
「うん?」
「これ……あとがきじゃないじゃん!!」
羞恥を隠さず、俺は叫ぶ。
なんだよこれ!?
恥ずかしすぎるって、こんなのっ!!
「あとがきだよ?」
きょとん、と首を可愛らしく傾げつつ、綾上は言う。
「いや、ラブレターだよねこれ?」
「あとがき兼ラブレターだよ?」
やっぱラブレターじゃん!
俺はツッコもうとしたのだが……。
「だって……やっぱり私は、君のことが好きなんだもん。結婚したいもん。……恋人同士じゃなくなったのかもだけど、それだけで私のこの気持ちまでなくなるわけじゃ、ないんだよ?」
切なそうな表情で、瞳にハートマークを浮かべながら言う綾上。
なにそれ、可愛……じゃなくて。
どうやってんのそれ?
「君は、違うの……かな?」
甘い囁き声に、俺の理性は容易く崩れそうになる。
もちろん、俺も綾上と同じ気持ちだ。
好きに決まっている。
抱きしめたいし、キスだってしたいし……それ以上の関係に進みたいとも思っている。
だけど、俺は。
綾上が悩み苦しんで得た決意を、無かったことにはしたくない。
そんな彼女と真っ向から向かい合うことを選んだ自分の選択を、無かったことにしたくない。
――それが、全く合理的ではない、ただの意地だとしてもだ。
だから、俺は自分の気持ちを伝える。
「あのさ、綾上」
俺の呼びかけに、「うん」と、小さく応える綾上。
「好きだ」
「ふぇ……」
顔を真っ赤にして、呆然とした表情で固まる綾上に、俺は続けて言う。
「大好きだ。ずっと、一緒にいたいと思っている。ずっと、綾上の隣で笑顔を守っていきたいって思ってる。……だからこそ。俺は、待つよ」
綾上のような作家ではない俺は、飾った言葉で気持ちを表現することはできない。
ならせめて――。
「いつか『三鈴彩花』が俺を……『もとべぇ』を見返す作品を、誰もが認める作品を書く、その日まで。――俺は、待つよ」
飾らずにまっすぐに。
自分の気持ちを、大好きな綾上に伝えたい。
「だから、頑張れ。……応援してる」
俺の言葉を聞いた綾上は、しばらく嬉しくて、困っていて、意気込んでいて、悲しそうにして……とにかく、色んな表情を浮かべてから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「うん! すぐに……絶対に、君を見返して見せるから。沢山の読者に認められる作品を書くから……。だからっ!」
お互いの視線が、まっすぐにぶつかる。
それから、綾上は笑顔を浮かべてから、言う。
「もう少しだけ。……待っていてください♡」
ぎゅ、と。
先ほどまで俺に読ませていた原稿を、幸せいっぱいの表情で抱きしめながらそう言った綾上。
……掛け値なしに魅力的な笑顔を見て、情けない話。
早速前言を撤回しそうになる俺だったのだが。
――それは、絶対に内緒の話だった。
『三鈴彩花』を叩いてから。
そして、『綾上鈴』と出会ってから。
俺の心には、かけがえのない感情が生まれて。
彼女には、辿り着きたい目標ができた。
それが――クソレビュアーの俺が|美少女作家(かのじょ)を叩いた結果だ。
〈了〉
クソレビュアーの俺が美少女作家を叩いた結果→告られました 【世界一】超巨乳美少女JK郷矢愛花24歳 @tonikaku
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