第12話 異世界の生き物たち

12. 異世界の生き物たち



 シンたちはまず、荷車をもとに戻す作業に取り掛かった。

 ヴォルフガングの竜である砂竜サンドドラゴンカイルは、主人の言うことをよく聞くので、シンは驚いた。カイルのおかげで簡単に荷車を元に戻すことができた。荷車と言っても作りは立派でちゃんと屋根までついたものだ。

 荷車に3人は乗り込んで、さっそくカイルは荷車を引いて進み始めた。馬車ではないので竜車と言うらしい。

 ヴォルフガングは手綱を握っているが、カイルはまるで御者の意志を理解しているかのように進んで行く。シンはあまり詳しくないが、映画で見るような馬を手綱で操作するイメージとは少し違っていた。竜車には御者の座れる座席は二人分しかないため、妹のイリスが、荷車のほうに下がって腰かけている。

 シンは、座席から竜車の方を見り向いてイリスがいることを確認すると、お礼のつもりで、頭を下げた。しかし、イリスは少し不思議そうな顔をした。ひょっとするとこの地域では頭を下げるという挨拶はしないのかもしれない。


 シンは隣のヴォフガングの方を向いて、他に気になっていたことを質問した。

「あの・・・さっきの話ですが、この世界にはドラゴンとか、ワイバーンとかそういう生き物が沢山いるんですか?」

「シン殿の住んでいたあたりにはいないのか?」

「ええ、それは空想上の生き物ということになっています」

「空想か・・・まぁ見たこともなければそう思っても無理はないかもしれんな。この世界でもさっきも話したが、この20年は発見されていない。今いる竜はもっぱら軍隊にしかいないし、見たことのない人もたくさんいるかもしれん」

「洞窟の中でスライムを見かけたんですが、他にもそういった生き物がいるんですか?」

「魔獣とか、魔物と言われる生き物がいる」

「魔物と魔獣は違うんですか?」

「ほとんど同じだが、人間に使役されているのが魔獣、一般的に人に害を加えるのが魔物だ。しかし、闇の支配者に使役されているもののことも魔獣と言うな」

「ということは、人に害を加えないものもいるんですか?」

「まずは家畜。馬とか、牛とかそういう人に害を加えない動物がいる。それに、聖獣と呼ばれている生き物もそれに入る」

「聖獣ですか?」

「たとえば、俺のカイルもそういう意味では聖獣だ。人が使役することのできるもののことを聖獣と言うんだ。他にはペガサスとか、ヒポグリフやグリフォンとかな。こういう生き物は普通、人に害は加えないが、使役されることで、聖獣と呼ばれるようになる」

「その使役されるというのは、ペットのように飼うということなんですか?」

「うーん。似ているが、少し違うな。聖獣師とか魔獣師と呼ばれる特別な力のある人がいて、その生き物と、使役したい人との間に契約をさせるんだ。たとえ運よく竜を捕まえたり、購入することが出来たとしても、聖獣師がいないとどうにもならん」

「そうなんですね。それでは少しドラゴンのことを教えてください」

「俺に分かる範囲ならな」


「さきほどこのカイルは砂竜サンドドラゴンと言っていましたが、他にも色んな種類がいるんですか?」

「色んな種類がいるな。もっとも多いのが地竜ランドドラゴンだ。これは馬とさほど大きさは変わらない。そして、この地竜と言われるものの中にも色んな種類がいる。地竜から成長すると、砂竜、大地竜グランドドラゴン鎧竜アーマードラゴン岩竜ロックドラゴン木竜ウッドドラゴンなんかになるんだ。ほかにも、空を飛ぶ翼亜竜ワイバーンなんてのもいる。それ以外にも泥竜マッドドラゴン、フェイルドラゴン何て言うのもいるらしい。だが、こういったのも文献に出てくるだけで、見たことあるのは地竜ランドドラゴン砂竜サンドドラゴン砂漠竜デザートドラゴン翼亜竜ワイバーンそのくらいだがな」

「色んな竜がいるんですね。なんだか見て見たくなってきました」

「まあ、もし見ることがあれば、それは命を無くす時かもしれんがな。ハハハハハハ!」

「いやぁ、無くしたくはないですねハハハ・・・」





【後書き】

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