妻が転生してきたら

バブみ道日丿宮組

お題:出来損ないの感覚 制限時間:15分

 休日の昼。

「ほら、ご飯の時間だ」

「ん……」

 ベットでゴロゴロしながら本を読んでた少女がぱたんと閉じ、

「今日もカップ麺?」

 テーブルにつく。

「そうだが? 嫌か」

 頭が振られる。

「嫌なら作ってもらうしかないな」

 俺に料理を作る才能はない。もっとも他のことも秀でたものはないが……。

「小学生にご飯作ってもらうって大丈夫?」

 こいつ頭大丈夫かという視線を浴びた。

「中身は30歳過ぎなんだから平気だろ? 今までだって作ってくれたじゃないか」

 この少女の見た目は小学生だが、中身は30歳過ぎのおばさんだ。

 それに料理以外の家事は全部この少女がしてる。今更料理ができないということはないはずだ。

「せっかく転生したんだから、楽したいかなって」

「単純に台所に届かないだけだろ」

 楽したいなら家事全般を引き取ったほうがいいのだろうかと考えてると、

「大丈夫だよ」

 笑みを返された。

「段差はそうかもね。なにか踏み台を買ったほうがいいかもしれない」

 そしていただきますと、少女はカップ麺をすする。

「……無理して一緒にいなくてもいいんだぞ?」

「いつまでも一緒にいるって決めたじゃない。ずっといるよ」

 少女の親御さんは、転生の説明を受けて、きちんと受け止めてくれた。俺の方の親は気でも狂ったのかという反応されたが、最終的にはこうして二人暮らしすることを許してもらってる。

 もちろん、幸せにするつもりだが少女はまだ小学生。その年代に結婚という概念はない。手をつないだ、ほっぺにキスした。その程度でほかほかするものであり、からかわれたりもする。

 そんな年代を過ごしてる少女におっさんの世話をする時間などない……はずだ。

「平日は遊んでるよ。みんな良いこ」

「あぁ知ってる」

 紹介されたことはある。

 だけど、家に連れてくるということはほとんどない。

 休日はこうして二人っきりでいたいというのは少女の言い分。嬉しい限りだが、本当にそれでいいのか?

 年齢差が20歳ほど離れてる以上、先に死ぬのは俺の方だ。

 その時、友だちがいれば、悲しみに落ちる時間も少なくてすむはずだ。

「もしかして死んじゃった時のことでも考えてるの?」

「えっ?」

「なんか憂鬱そうな顔してるからさ、私がいえたことじゃないけどーー」

 深呼吸。

「死んでもきっと新しい何かを見つけることができると思うんだ」

 少女の手が俺を手をにぎる。

「今を楽しもうよ。私は頑張ってるあなたを見るの好きだよ。あなたは才能がないって思ってるかもしれないけど、また私を見つけてくれた。それは一種の才能だと思う。だからーー一緒にいよう」

 言葉は続かなかった。

 立ち上がり、俺の隣についた少女は俺を抱擁し、少女が生きてるという鼓動を聞かされた。

 かつて聞こえなくなった音だった。


 それから、たくさん泣いた俺を少女はしっかりとあやしてくれた。

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妻が転生してきたら バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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