11
優し気なその声に、顔に熱を持ったまま私は理事長に顔を合わせる。
「和香さん」
「……ハイ」
「どうか、蜜も、氷とも、これからも仲良くしてもらえたら嬉しいよ」
ふわりと佐藤の手が私の手に重ねられる。
「もちろん。こちらこそよろしくお願いします」
佐藤を見上げると、その表情からはもう苦しさなんて消えていて、清々しさすら感じられた。
理事長室を出ても、まだ佐藤の手は離れず、気恥ずかしさはあるけれど今日だけはいいかと受け入れていた。
「佐藤ってさ」
「うん?」
「普段声高いけど、なんか練習とかしてたの?」
「地声の声域が広かっただぁけ」
いつの間にか、いつも通りのギャルに戻っていた佐藤は、今度ははぐらかすことなく、私の質問に答えてくれる。
「じゃあ、妹の名前使ってたのって、なんで?氷だと女っぽくなかったから?」
その質問に一拍置いてから、佐藤は口を開く。
「それもあるけど、蜜って学校ちゃんと行けてないわけじゃあん?」
「うん?」
「蜜の友達を作りに来てるのに、『蜜』っていう名前に馴染めないまま友達候補を蜜に合わせるとなると、あーしの友達感が拭えないしぃ……」
うん?
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