12
「酒扱うところは、そーいうやつ多いんだよ」
「お酒ね」
店の名前や業種を避けた言い方をしたということは、ここから先は聞いてほしくない話なのかもしれない。
そう思い、私は視線を再びスマホの画面に戻した。
佐藤には、こちらが聞くと避ける話がある。
それは、家族のことや、自分の深い所や……名前、まで。
佐藤は名前で……蜜と呼ばれることを嫌がり、最初会った頃には既にそうお願いされていた。
『蜜』という名前が、自分には合わないからだと。
だから私も、緑も、鞠も、佐藤のことは名前で呼ばない。
佐藤だけが苗字を好むから、佐藤を佐藤と呼ぶ私たち。
「佐藤、ほんとは今日何しに来たの」
学生時代の佐藤を眺めながら、そんなことを聞く。
正直、全然頭は働いてないから、佐藤がなんか難しい話をし始めた所で、私はちゃんと話せる余裕はないと思う。
佐藤が勝手にレンジでチンして温まり終わった軽い音が、狭い一人暮らしの部屋に響き渡る。
いつの間にレンジを使っていたのか、自由人だなほんと。
「和香に、消化のいいもの食べさせたげよと思ってー!」
急にギャルモードに切り替えた佐藤がルンルンとレンジから何か取り出して来る。
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