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急に、この部屋に二人きりだということに意識が向いて来て、失敗したんじゃないだろうか、と考えが浮かぶ。
友達とはいえ、簡単に家に上げてよかったのか……?
私は、考えを振り払うようにして、小さく震える指先をスマホの画面に置く。
「……これ、佐藤」
「ぴんぽーん」
声は静かで低くとも、それは確かに佐藤の面影が残っているような、おどけるような口調で。
私の頭の中は、酷く混乱した。
「これ、高校ん時の俺」
「……俺、っていうの」
「そだね。今でも言うよ、バイトの時とか」
え、と顔を見上げて佐藤を見ると、それはいつも通りの佐藤の顔をしていて。
「バイト、男として行ってるの?」
「夜は絡まれやすいからさ」
いつもの見慣れた佐藤の顔が、いつものように近くにあって、けれどその声も一人称も馴染みのないもので、また混乱する。
確かに、夜の時間帯に佐藤みたいな軽い感じのギャルなんかが働いていたら、すぐに絡まれそうだし……佐藤のバイト姿を見たことがない。
それは、私たちが佐藤を『女』だと認識していたから、もしすれ違っていたとしても気付かなそうだ。
「そんな、絡まれやすそうな所でバイト、してるの」
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