8



バットタイミングすぎるでしょう、これで確実に私が部屋の中にいることが今のでバレたじゃ……そう考えながらスマホの画面をのぞき込むと、そこには『佐藤蜜』その名前が表示されていた。




「……」


「なんだ、やっぱ帰って来てるじゃん」




扉の奥から、その聴き慣れた声がする。


アンタ、さっき解散したんじゃなかったの……いや、さっきといっても私が床に突っ伏している間にどれだけの時間が過ぎていたのかは不明だけれど。


声を上げるのも面倒くさい私は、その電話を通話に切り替える。




「なに」




佐藤の家は、確かに私の家の方面にあるから、近いと言えば近い、他の二人に比べれば。


けれど、これまで解散した後に個人的に会いに来るなんてことはなくて、帰り道が一緒だから家も知っているだけだったり、四人で遊ぶときに迎えに来るくらいしか来なかった。




「『あーけーて』」




電話と扉越しの両方から、そんな声が聞こえる。




「佐藤帰ったんじゃなかったの」


「『用事済んだから、ついでに動けなくなってそうな和香の様子見に来たのー。まさか床に寝転んでなんてないよねぇー?』」




……よくわかってらっしゃる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る