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くるりくるりと回りながらストンとベンチに腰掛けた佐藤蜜という人間は、また何か企んでいるような顔で私を誘っていた。


そんなに回って吐かない?大丈夫?


このまま放置して帰るのも危なっかしい……私は佐藤の隣に座って一緒に空を眺めることにした。


このまま佐藤の酔いが少しでも醒めれば、この後私が楽に帰れることだろう。




『ふふっ』




そう笑って肩に腕を回して来る佐藤に、今日はやけにダル絡みしてくるな、と考えていた。




『のどか。和香。うん、和香ってなーんでも受け入れてくれそうだよねー』




少し声音の落ちた静かな声が、鼓膜を揺らす。


なんとなくその声は、いつものハスキーな声よりも少しだけ低くて……喉が枯れたせいなのかな、なんてその時は思っていた。




『別に、絶対なんでも受け入れるわけじゃない』


『そーいう風に言える所だよー、マジ。話聞けない奴マジで自信過剰だもん。和香は受け入れられないかもしんない自分を、受け入れてんじゃん』




よくわからない、何の話がしたいんだろう。


褒められてるのか?なぜ?


チラリと視線だけを佐藤に向ければ、じーっとこちらを見つめている瞳とかち合う。




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