3



『なに』


『あーしの秘密も、和香なら受け入れてくれんのかな』


『秘密?』




それは、心の準備なんて時間を挟む間もなく。




『あーし、男なんだよねぇ』


『は……?』




全く理解も何も出来ない頭で、鼓膜だけがその音を拾っていた。


するりと私の額を撫でる手が、前髪を横に流す。


むちゅっと、額に唇の当たる感覚があってもまだ、その言葉を信じることなんて、出来なくて。




『のどか』




やけに低くなったその声が、目の前にいた『佐藤蜜』だった人間を、そう認識させないようにと働きかけてくるから、佐藤の胸元に手を当てて引きはがすように押した。




『……む、胸』


『あぁ、これパット。外したらぺっちゃんこ。もう貧乳通り越して胸なんてないよぉ』


『……し、信じられるわけ……だって一年の頃からの付き合いなのに、なんで今更……』




本気か?冗談か?からかわれているのか?


じゃあこの低い声は?


この肩に回ってる力強い腕は?筋肉は?


男にしては細身の肩は……?




『やっぱり』




佐藤は私の頭に手を乗せて、呟く。




『和香はこんな突飛な話でも、一生懸命、考えてくれんだね』

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