例え覚悟はしていても

その日から数日経ったある日の事だった。


美紗は呆気なくあの世へと旅立ってしまった。


私は毎日の様に彼女の家に通ったが、彼女の死に目に会う事が出来なかった。


使用人が知らせに来て、飛んで行ったが、間に合う事が出来なかったのだ。


使用人の女は、


「お許しください。」


とその場で泣き崩れたが、彼女を責める事など出来るはずがなかった。


いつものように床に横たわる彼女に私は近付く事が出来なかった。


その日はお義父さんもいて、彼と私は初対面だった。


無表情な人で、青白い顔をして、私をじっと見ていたのを覚えている。


しかし、私はその時自分の悲しみで精一杯だったために、彼の印象はそれ以上残っていない。


私は頭と体が冷えていく感覚に、氷溶け出す川の水が体中を駆け巡るようだとぼんやりと思っていた。




まだ生きているのではないかと少しばかり疑っていた。

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