青白い花嫁
その日、美紗の部屋まで行くと、白粉を塗り、紅を指した彼女が白無垢を着て待っていた。
青白い顔が白粉の白さに負けて、病的ではあるが、不思議な美しさを醸し出していた。
美紗の顔を見ると、何故か涙が出そうで、すぐには直視できなかった。
すると、美紗が私の紋付の袖をひっぱり、
「素敵よ。平太さん。」
と薄く頬を桃色にさせて微笑んだ。
昔のように真っ赤に紅がかかる事のない顔に、
「美紗も綺麗だ。」
と言って笑いかけてやる。
美紗は嬉しそうに頬に手をやって、初めて会った時のような顔ではにかんだ。
美紗の母は薄く微笑んでおり、その場で写真家の男だけが泣いていた。
美紗は白無垢に血をかけまいと躍起になっていた。
痩せこけた白い顔は、美しいが死人のようだと心のなかでコッソリと思ってしまった。
何故こんなにも美しく、前向きな彼女が若くして死ななければならないのだろう。
私はその日撮った写真の一枚を胸ポケットに入れ、ずっと大切に持ち歩いていた。
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