お義母さん
美紗が疲れて眠り出し、随分と遅くなってしまったので、お暇しようとすると、夕飯いただくように言われた。
自分の普段食べているものとは違う華美ではないが、
上品な小鉢が並んだが、どうにも今日は味を感じる余裕がない。
黙々と口に出された物を詰め込み、
どうにか全て平らげると、美紗の母が食後の茶を飲みながら訪ねてきた。
「あなたは娘の事をどう思っているのですか?」
目を伏せて茶を飲みながら、こちらの回答を待っているようだ。
私は少し考えた後、
「愛しい人です。」
と美紗の母を見ながらしっかりと伝えた。
口に出してみると、図らずも目頭に熱いものが溜まってくるが、どうにか飲み込む。
美紗の母は、眉間を少しの間掴むと、
「あの子の命は持って2カ月だそうです。」
と震える声で呟いた。
わかっていた。
美紗は今日、楽しそうに明るい表情をしていたが、笑ってせき込むふりをして、
口から出た血を色の濃いハンカチで拭っているのに気付いていた。
それでも実際に言葉にされてしまえば、頭に衝撃は走る。
頭から背筋まで一気に冷や水でも駆け巡ったようだ。
「こちらの身勝手は承知ですが、残りの間あの子をどうかよろしくお願いします。」
お義母さんは席を立つと私の目の前まで歩いてきて、深々と頭を下げた。
この日は美紗の父は帰って来ず、美紗と私の婚礼の儀を小さく三人でやろうと約束をし、
私は久々に実家へと戻った。
ぐるぐると考え事をしていると、いつの間にか家の前へと着いていた。
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