桃色の君
放課後、学友に先に帰るように伝えて、銀杏の木のある所へと向かうと、
そこには桃色の着物と袴を着た後ろ姿があった。
白い手で金色の銀杏の葉をするりするりと弄んでいる。
その後ろ姿と、艶やかな黒髪に見覚えがあった。
(美紗・・・?何でここに君が?)
私は何故か罪悪感を抱いて立ち止まってしまったが、砂利の音を聞いたのか、美紗がこちらを振り返った。
ばちりと視線が合わさると動けなくなる。私は学生鞄を取り落としそうになった。
私は彼女の大きな目に滅法弱いらしい。
美紗は私を見つけると「会いとうございました。」と言って、私に抱き着いてきた。
私は驚いて今度こそ鞄を取り落とし、美紗を受け入れる。
「私、平太さんと昔みたいにお喋りがしたかったの。いつも周りに人がいてちっともお話が出来ないんだもの。」
遊んでいた頃のような砕けた口調でむくれる美紗に、私はじっと真剣な目で視線を合わせた。
心臓の鼓動が妙に早く、心は浮かれていたが、こればかりはしっかりと伝えなければ、
彼女が余所の男の物になってしまうと考えたのだ。
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