恋文

「待っています。」


あの日彼女は確かにそう私に告げたのだ。









私が高等学校に進み暫く経った頃、いつも使っていた机の中に一枚の桃色の便箋が入っていた。


生まれて初めて見るような綺麗な便箋に、何の知らせか見つけた時は戸惑ったものだ。


中を開けて文の内容を確かめると、確かにそれは私の名が書いてあり、切ない恋心が綴ってあった。


(誰かに頼むか忍び込んだのだろうか?さぞかし恥ずかしかったことだろう・・・。)


初めての恋文に少し浮かれたが、送り主の名はどこにも書いてなかった。


ただ、時間と共に学校近くの銀杏の木を指定されていて、未だ美紗に恋心を抱く私は、

この桃色の君に恋文を返してやらなければならないとひっそりと思った。


(どんな子だろうか・・・。礼と共に思い人がいると伝えよう。この恋文は申し訳ないが返させてもらおう。)




私は少しの好奇心と、罪悪感で痛む胸を押さえて、桃色の君に会いに行った。


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