告白

「俺はな。美紗。」


彼女の目が次第に潤み出す。


どうして良いのかわからなかったが何とか目を合わせて言葉を続けた。


「俺の家は金がないけれど、何とか大学へ行って役人になろうと思う。」


彼女が不思議そうな顔をする。


大きな目に見られていると心臓が止まってしまいそうだ。


「それから・・・。お前の家に縁談を申し込むつもりだ。」



俺の顔は真っ赤だろう。


それも気にせず美紗の目を見つめると、大きな目を更に見開いた。


「そのためにはな。美紗。俺は学生の内はお前と過ごす事が出来ないだろう。」


肩を掴んで美紗の体をゆっくりと自分から引き剝がす。


名残惜しいが仕方がない。


私が美紗の目をしっかりと見つめながら返事を待つと、


「待っています。」


と涙を拭いながら、それはそれは綺麗な笑顔で彼女が微笑んだ。






この日私達は二人しか知らない口約束の婚約者になったのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る