浮かれる

「あなたのお名前は?」今度は美紗が尋ねる。


「平太。」とまた素気なく答えてしまうが、美紗は嬉しそうに「平太さんね。」と繰り返した。


何だかくすぐったい気持ちになって、ごまかすように呟いた。


「もっと近くで見ればいいのにさ。」


「えっ。」と美紗が驚いたように聞き返す。


「好きなんだろ?チャンバラ。」


「うん・・・。」美紗は嬉しそうにはにかみ、明日また来る約束をした。


私はその日、もう少し美紗と話したくて家まで送っていった。


美紗の家は意外にも私の家のすぐ近くだった。


私の小屋のような家と大違いの大きな家に驚いて、美紗に立派な家だと伝えると、またあの愛らしい顔ではにかんだ。


その日、私はずいぶんと遅く帰ったために、両親から大目玉を食らった。




少しは反省しても良いはずなのにその日の私は浮かれ切っていて、何かあったのじゃないかと逆に両親を心配させてしまった。



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