思い出に耽る

何故かいつもより足を取られ、四苦八苦しながら歩いていくと、やっとの思いで川辺へと到着した。


やはりそこも綺麗に舗装されており、ちらほらと散歩にいそしむ人が見える。


川から吹くそよ風を感じながら、私はゆっくりと目を閉じてみた。


(水の音だけは何も変わらない・・・。)


私はふと先程会った自分の妻を思い出した。


(米子とここを歩いたことがあるだろうか?)


いくら思い出そうとしても自分と共にこの川辺を歩く米子の姿が浮かんでは来なかった。


私達は親同士の勧めで結婚した。


私は見合いの日まで米子に会ったことは無かった。


そして結納を交わし、二人の子供を育て、今に至るのだ。


「50年か・・・。」


今度はそう口に出して呟いた。




しかし、この時私の思考はそれよりも更に昔へと飛んでいた。

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