第58話 ドリアンの臭い

「ひゃ~ たまげだよ~」

漏電しているようだと言って天井裏に上っていた石塚君が、埃の付いた服を払いながら事務所に入ってきた。

「何したのや?」

「天井裏で すっごいもの見つけだっけは」

「なに見つけだのや?」

「あがてみっど わがる」

何やら天井裏で見つけてきたようなのだが、ニヤニヤするばかりで説明しようとしない。

「わらてねで おしぇろず~」

「んだがら あがてみできたらいいべ」

教えてもらえそうもないので、懐中電灯を片手に天井裏へ上がることにした。

梯子を登り、四つん這いで薄暗い天井裏を進んで行くと、懐中電灯に照らされた先に黒い固まりが見えてきた。

ちょうど事務所で仕事をしている場所の真上あたり...

近づいてよく見たのだが、その正体を理解するのに数秒の時間が必要であった。

「うぁぁぁ... ひぇ~...」

思わず言葉にならない声が出た。

ナッなんと ウンコ! それも、とぐろを巻いたような山が二つ! ご丁寧に紙まで添えてある。

一体誰がこんな所に?

転げ落ちるように梯子を降り状況を整理しようとするのだが、頭の中はパニック状態である。

「ガハハハ どうだっけや?」

石塚君はゲラゲラ笑っている。

話を聞いた阿部君は大口を開け、信じられないと言う顔をしている。

「なんだが最近ドリアンの臭いするなぁど思っていだんだっけず...」

佐藤君は納得したように呟いている。


それにしても、天井裏にウンコをするなんて...

何か恨みでもあるのか? それとも企業テロか?

ひょっとして、ベトナムではそんな風習があるのだろうか?


いや待てよ、これでウンが付いて受注が増えるかも知れないぞ...

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