第57話 頭痛

部屋から降りてきた石塚君が浮かない顔をしている。

「なんだが 顔色われんねが?」

「んだず... にさんにじ 頭の後ろいっだくてよ... 薬飲んでもなおらねんだず...」

「薬飲んでもなおらねなて 医者しゃ んがんねべず 脳の病気だったら大変だべ」

「んだなぁ コロンビア・アジア・クリニックさ いってみっが」

さっそく電話をして石塚君は病院へ向かった。


「ベトナムで脳ドッグなてないべずね」

阿部君が心配そうに言っている。

「CTスキャンとがMRIなて無いべがら 原因わがらねがったら 日本さ帰さんなねべは」

「ベトナムで むずがすい病気になっど 大変だずね~」

「ちょっとした手術でも シンガポールどがバンコックさ 移送されるみだいだよ」

「やんだね~ 海外勤務は健康第一だなっす」

「阿部君は鉄人だがら 病気になの ならねべ~ あぶないどごさだげ んがねど大丈夫だ~」

「うひゃははは」

石塚君の病状を考えると笑っている場合ではないのだが、なかなか戻ってこないので心配になる。


出かけてから2時間ほど過ぎた頃ようやく戻ってきた。

アパートのロビーで待っていた全員が結果を探るように顔をのぞき込む。

しかし、本人の表情からは何も伝わってこない。

「どっ どうだったのや!!?」

説明を待ちきれない阿部君が訊ねたのだが、石塚君はなにやらモジモジしている。

何か大変な状態だったのだろうか...

「はやぐ 説明すろず!」

イライラした佐藤君が促した。

「うぅぅ 薬もらてきた ほれこれだ」

なにやら見覚えのある薬である。

「サ・ロ・ン・パ・ス... サロンパス!?」

「頸椎筋肉痛だど... 寝違えだんだべなぁ... サロンパス貼って よっく揉めば治っどよ」

「キャハハハ 心配したんだじぇ~ んでも いがったなぁ」

メントールの香りに包まれた石塚君はホッとした様子であった。

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