第51話 バナナの木

政府の仕事をしているチュンさんと会食をした。

若い頃、ベトナム解放軍で活動していただけのことがあり、厳つい顔で睨まれると凄みがある。

多少のお酒も入り座が和んできた頃、おもむろにチュンさんが口を開いた。

「ベトナム カイホウグンハ オトコモオンナモ タタカッテイタノデス」

「それは大変だっけなっス」

「アルヒ ジャングルノナカヲ コウグンシテイタトキ ショウタイカラ ハグレテシマイマシタ」

どうやら、ベトナム戦争中の思い出を話し始めたようである。


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ベトナム解放軍は男も女も戦っていました。

ある日、ジャングルの中を行軍していた時、小隊からはぐれてしまいました。

はぐれたのは私ともう一人の若い女性。

追いつこうとしたのですが、夜も更けてしまい野宿をする事にしました。

離れていては危険なので一緒に寝ることにしたのですが、女が心配そうにしています。

安心させるため、二人の間にはバナナの木を置いて寝ることにしました。

翌日、山を越え川を渡り追いかけました。

女は少し疲れているようです。

なかなか追いつけず、その日も暮れてしまったので、またバナナの木を置いて寝ることにしました。

翌朝、女はとても不機嫌な顔をしています。

「どうしたんだ? どこか具合でもわるいのか?」

「あなたは毎日野山を走り回るほど元気なのに、どうしてバナナの木を越えることが出来ないの?」

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ちなみに、今のチュンさんにはバナナの木を越える気持ちは大いに有るが、体力が無いとのことであった。

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