第50話 ホビロン

ついに! 食卓にこれが出てきたのだ!

うぅ~ん これだけは食べたくないと思っていたのに....

その名は「ホビロン」、口に出すのもおぞましい究極の料理。

しかし、ベトナムではグルメの代表的料理になっていると言う。

お腹を空かして帰ってきたのに、一瞬にして食欲が無くなってしまった。

殻を透かして見える孵化寸前のアヒルの卵。

頭部や羽の出来かかりが、殻を通して見えているのである。

こんな物をゆでて食べようなんて、誰が考えたのか大馬鹿者である。


「オレ ダメなんだず~ きもずわれぐなてきたは」

「んだがした オレこういうのすぎなんだ 食べでみっかな」

平気な顔をして石塚君が殻を割り始めた。

半開きの状態を覗くと、羽や足と思われる部位が白身に混じって固まり、頭部がこちらを睨んでいる。

とても食欲をそそるような代物ではない。


スプーンを差込んですくい上げ、口に放り込んだ石塚君は満面の笑みを浮かべている。

「ウ~ン んまい!」

「んまいなて どだな味すんのや?」

恐る恐る聞いてみた。

「んだなぁ 卵と肉の中間の感じだなぁ ほれがらウニのような味もする」

ウニのような味?  卵と肉の中間...?

一体どんな味なのかは知らないが、こんな物を平気で食べている石塚君を見ていると、何となくベトナム人のような風貌に見えてくるから不思議である。

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