第二章 ベトナム編

第41話 ベトナムだぁ!

社長に呼び出された。

急ぐような案件など心当たりは無いのであるが、何となく不安な気持ちで社長室をノックした。

「おはよっす!」

「あぁ 部長が 入って こごさ座れちゃ」

ソファーに座ったものの落ち着かない。

社長の口から何が飛び出すのか...

「部長には 来月からベトナムさ行って ほすいんだ」

「はぁ 出張だがっす?」

「んねず ベトナムのホーチミンさ 工場作って欲すいんだ」

「え~っ!?」

以前からホーチミン市に工場を建設する話は持ち上がっていたのだが、自分には関係無いと思っていただけに複雑な気持ちである。

社命には逆らえず引き受けたものの、帰宅する足が重い。


「ベトナムさ転勤に なたずはぁ...」

「ベッベッ ベトナム!!!」

夕食後のリビングは騒然となってしまった。

妻は目を丸くしている。

娘は口を開けて何か言おうとパクパクしている。

「いづ んぐの?」

「ベトナムて ベトナムて どごさあるんだっけ?」

「ベトナムさ なにしにんぐのや?」

「ベトナムだて広いべ ベトナムのどごさ んぐの?」

立て続けの質問で答える暇もない。


「ベトナムのおみやげて なに有名なんだべ」

「生春巻きなてゆうの ベトナム料理 んねっけがや?」

「んだんだ フォーとか果物も んまいべね~」

「こないだテレビでベトナム特集しったっけ 安くていいもの いっぱい売ってだっけば」

「行って みっだいなぁ~」

「私も行って みっだいなぁ~」

「いづ 行っていい?」


私への心配などどこかへ消えてしまったようだ。

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