第31話 合鍵
娘がイギリスに行くと言い出した。
夏休みを利用し、英語勉強のため一ヶ月近くホームステイをすると言うのである。
すでに手続きを済ませ、バイトで貯め込んだ預金で支払いも済んでおり出発するだけとのこと。
反対するつもりはないが、唖然とするばかりである。
そんな話を聞いたのか祖母が駆けつけてきた。
「イギリスさ んぐんだて!?」
「んだよ」
「わがいむすめが 一人で外国さ んぐなて じぇったいだめだ!」
「あそびに んぐの んねんだがら」
「勉強だて だめだ しんぱいでしんぱいで....」
「だいじょうぶだず おばあちゃんのじだいど つがうんだがら」
「わるい おどごがら だまさっだりしたら たいへんだ」
「ほだなごどぐらい わがてっから だいじょぶだず」
「しんぱいだがら テーソータイでも してんがんなね....」
「テーソータイ? ほいず なにや?」
「......」
祖母の口から貞操帯が出てくるとは思わなかった。
すでに死語になったと思われる言葉が出てきたおかげで、その意味を巡り家族中で口論となった。
娘のイギリス行きなどそっちのけで、貞操帯の歴史的価値などを論議しているち、十分に意味を理解した娘が口を開いた。
「男って 単純だずね」
「なしてや」
「ほだなもの ほんて役立つと おもてだんだべか わたしなら合い鍵作っておぐもの」
「......」
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