第30話 ナンパ

連休に入り、暇を持て余していたので妻と七日町界隈に出かけた。

老舗のデパートが閉店してしまったので、人通りは少なくなっていたのだが、連休ともなれば多少は賑わっているようである。


遅い朝食をブランチで済ませたせいか少しお腹が空いてきた。

「はらへったずね」

「んだな ほごさあるモスバーガーに はいてみっか」


「いらっしゃい」

「んだなぁ コーヒー二つとチーズポン四つ けでけらっしゃい」

「お持ち帰りですか?」

「んね こごで くてんぐ」


店内では茶髪の若い男と女子高生がスマホを片手に大声で話をしている。

「店内での携帯電話のご使用はご遠慮願います」の張り紙など目に入らない様子。

空いていた隣のテーブルに座り、チーズポンをかじってみたが耳障りな会話で落ち着かない。


コーヒーをすすりながら妻が言った。

「なんだが わだしだ くるよなどご んねみだいだね」

「ほだごどないべ わがいひとだ 賑やがにしてるんだがら おらだも もっと賑やかに喋っど いいのっだな」

「はずがすいべずー」

止めるように言った妻だが、私が何かきっと言い出すのだろうと覚悟した様子。


「ナンパすっだいなー!!」大声で言ってみた。


一瞬、店内は静まり返った。

茶髪男と女子高生はスマホを持ったまま半開きの口で私を見つめ唖然としている。


恐れ入ったか「中年ナンパおやじ」は元気なのだ!

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