第9話 真面目な方言

なぜ方言がいろいろな地域で生じるのか?

「ほだごどゆたて わがらねなぁ」

と言いたいところですが、たまには真面目に考えたいと思います。


まず、方言とは何ぞや?と言う疑問が生まれます。

言語学的に言うと、方言とはその地域で使われている全ての言葉を方言(地域方言)と言います。

例えば、この辺りで使われている言葉全てを「山形の方言」と言います。

その中で、特に特徴のある語彙(普通これを方言と呼んでいる)を「俚言(りげん)」と呼びます。

また、社会的地位の違いにより使われる言葉も変わってきます。これも一種の方言で、社会方言と呼んでいます。


では、このような方言は何故発生したのでしょうか?

方言周圏論というのがあります。

全ての方言がそうであるとは言えないのですが、簡単に言えば、文化の中心から外に向かって言葉が伝わる、と言う考え方です。

昔の文化の中心は京都でした。

つまり、京都で使われた言葉(流行語)が時間とともに地方に伝わり使われるようになった。そして、その名残が方言として残っていると言う考え方です。

したがって、京都から遠いところで使われている言葉ほど古い言葉であると言えます。

何種類もの語彙を選んで、その使われ方を全国的に調査すると、京都を中心とした円形状に分布していることが多くの学者によって証明されています。


言葉の伝わる早さを計算した学者(徳川宗賢 先生)もいます。

おおむね次のような早さです。(京都を中心に)

東海道方向 0.75Km

北陸方向  1.06Km

中国方向  1.10Km

四国方向  1.23Km

いずれも1年間に伝わる早さで、約1.0Km/年が平均と言えます。

これも、マスコミなど発達していなかった大昔のことで、現在ではTVなどのマスメディアにより瞬時に日本中に伝わりますから意味のない数字になってしまいました。


方言とは、このように文化の中心地(京都や江戸)から発信された情報の名残とも言えるわけです。

このような考え方を推し進めると、方言を使うという意味は日本古来の文化を保存する事にもつながるわけで、「部長の独り言」に記載されているエピソードは大変重要な役割を担っていると言えるのであります。(ちょっと大げさかな...)

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