第7話 粘膜質

妻の友達が遊びに来た。

久しぶりの再会なのか、会話も弾み私の存在など眼中にない様子である。

たわいない話題の連続だが、それなりにストレス解消になっているのだろう。


ひとしきり盛り上がった話も尽きた頃、妻の友達が思い出したように口を開いた。

「子供がら 水疱瘡うづてよ...」

「ありゃ 大変だっけべした~」

「んだず 大人が水疱瘡なっど あだいひどぐなっど思わねっけは」

「体中さ みずぶぐれ出だんだべ?」

妻は痕を探すように訊ねている。

「ほだな 体中だげなのんねんだじぇ」


大人の水疱瘡が、子供の頃より大変だと言うことは聞いていたのだが、どの程度大変なのか実感がわかない。

「なに? どだごどなんのや?」

「みずぶぐれ特に柔らがいどごさ いっぱい出んのよ 口の中どが鼻の穴どがよ」

「あじゃ~ 鼻の穴の中までが」

「んだのよ ほいづがよ口や鼻だげんねんだず」

「なに~!」

「んだず ケッツの穴どが 前のほうどがよ...」

「ありゃ ほだなどごさまで出るんだがした!」

どうやら体中の粘膜質全てに発疹が出るようである。

「出るだけならいいんだげんと かくてかくて....がまんさんねぐらい かくてよ~」

「アハハハ」

「あそごかいのだげは我慢さんねくて パンツの上がらこすってだら 変な気分になてくるっすよ~ キャハハハ」


私が居ることなどすっかりお構いなしで、オバサン会話を楽しんでいる二人であった。

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