第18話 主要メンバー集結?

 俺は一人で、食堂に来たのはいいのだが……何であいつも一緒に付いてきているんだ?

 彼女は俺に対して話しかけることもなく、学食だというのにトレイも持ってはいない。それでもって……こいつは何で俺の隣りに座っているんだ?


 せっかく学食にいるんだからせめて何か食べろよ。

 バイキング形式とはいえ、後ろをずっとついてこられても邪魔なの分からなかったのか?

 大量の料理を二往復して、テーブルへ置くのだが……さすがに、往復の際も付きまとう必要はないだろうとおもうのだが……何が目的なんだ?


 俺が椅子に座ると、パメラも隣へ座る。

 気にはなるが、敢えて無視を通し黙々と食べ始めていた。

 一つのトレイを食べ終え、横目でパメラを見てみると何で落ち込んでいるのか分からなかった。


 というかですね……少々周りの視線というものも気になるわけで、そろそろお帰り願いたい。

 どんな噂が流れてもいいが、こんなでも一応は婚約者持ちというわけで、何を言われるのか分かったものじゃない。

 一番気にするのは、レフリアが突っかかってきそうだから。


「それで? 俺に何のようなんだ?」


「先程はありがとうございました」


 いい加減話も進まないので、俺から声をかけるとパメラはお礼を言いに来ただけのようだな。

 まあ、それぐらいのことはするのも当然だよな。


「ああ、お前の仲間をおぶったことな。あれぐらい、別に気にするな」


「何故ですか?」


「は?」


 パメラは悔しそうに、スカートの端を強く握りしめ唇も噛んでいる。

 一体何があったのだろうか? 何故とは一体何を言っている?


「どういう意味なんだ? これうまっ、お前も食べるか?」


「いりません!」


 嫌がるのも当然だよな。食べかけを差し出すという最低行為なのだから。

 それでも、パメラは席を立つことは無かった。この時点で少しイライラが募ってしまう。

 こっちとしては、面倒だから相手をしたくないというのに……落ち着け、俺はもう立派な元社会人だ。子供のちょっとした我儘に、イライラする事もなだろう。


「仲間たちに貴方がやってくれたことを話しました。けど信じては貰えず。私はパーティーを脱退させられました」


 そりゃそうなるだろ? こいつは俺がどう見えているんだ?

 俺のことがボヤケて見えているのならメガネでもかけろよな。

 その前に医者に見てもらうべきだな。


「ふーん、あっそ。大体ポーションぐらい誰だって持っているだろ? まあ、正直な所。余計なことを言うお前が悪い」


 仲間に同調するのならまだしも、反発して良いことはないだろう。

 傷を負いかなり危険な状態だったんだ。そんな中、特待生とは名ばかりの俺が助けただなんて誰が信用できると言うんだ?


「なぜですか!?」


「落ち着け。周りにいる人の事も考えろ」


 それにしても、ここの料理マジでうまい。それなりにカロリーもあるし、学生というだけでいくら食べても文句は言われないしいいところだ。

 もう一回おかわりでもするか。これ以上食べすぎて出禁も避けたい所だな。


「俺は見ての通りの奴だぞ? げふ」


 態とらしく下手なゲップをして、自慢のワンパックをポヨンと叩く。


「お前の言うように、こんな奴に助けて貰った事自体、屈辱的な恥だろうよ。今からでも遅くない、謝ってパーティーに戻してもらえ」


 パメラの初日ってこんなに厳しいのか?

 そもそも他のクラスとパーティーというのが無かったのだから、パメラのシナリオの場合はモブから始めるのか?


 ミーアの場合だと、選びようもないけど……こいつの場合はあの王子が、攻略対象なんだよな?

 どんな接点からはじまるというんだ? それともあんなだからこいつは一人になったのだろうか?

 いくら考えても、知らないシナリオには想像すらできない。


「貴方は何故そんなに強いのですか?」


「やれやれ、本当にお前の目は節穴だな。先月の実技見てなかったのか? 仮にも同じクラスだろう。お前が前にいたパーティーが嫌だったら、お前一人ならミーアの所に入れてもらえばいいだろ?」


 ミーアはともかく、レフリアは反対するかもだけど。

 今の時点ではハルトとまだ婚約者でもないからな。シナリオの序盤は恋人ですら無いが、二人は互いに惹かれ合っているのは確かだとは思う。

 そんな中、パメラみたいなのが来たら一波乱ありそうだが、見ている分には面白そうだけどな。


「貴方と組めないのでしょうか?」


「はぁ。お帰り願おうか……」


「アレス様とパーティーでしたら、まずは私を通してくださいませ。申し遅れました、アレス様の婚約者ミーア・シルラーンと申します。以後お見知りおきを」


 よりにもよって、このタイミングでこっちに来るのかよ。

 遠くから俺を見ていたようだったけど……それにしても、ミーアってこんな声を出すのか。


 声の様子からして後ろを振り返りたくはない。というか、俺が怒られそうな気がしているのは何でだ?

 な、なんというか、背中からすごい重圧を感じるのは何で?

 い、いや、これはチャンスなんだ、婚約破棄をするのなら……あの馬鹿王子みたいなことをしてもいいんじゃないのか?


「パメラ・ストラーデです。ストラーデ子爵家の長女です」


「ええ、存じております」


 パメラも席を立ちミーアと見合っている。

 俺としては、この場からとりあえず逃げたい……とはいえ、このまま沈黙のままいるのも居心地が悪い。


「ミーアは、なんでここにいるんだ?」


「それは……えっと」


 なんでそこでしおらしくなるのか……さっきの威勢は何処に行ったんだ?

 困った顔のハルトは、今にも殴ってきそうなレフリアを後ろから羽交い締めにしている。

 何なんだこの状況は……カオス一歩手前か?


「いくら婚約者様とはいえ、パーティーの加入に口出しはできない決まりですよ?」


「え? そうなの?」


 それで、王子ともパーティーを組めたというわけか?

 というか煽るなパメラ。それにさっき断っただろうが!

 ミーアは痛い所を突かれたのか少しだけ怯んでいるようにも見える。


「それに、シルラーン様はアレスさんとは違うパーティーではありませんか。でしたら私達の話に首を突っ込まないでください」


 なんか、こいつが何でパーティーから外されたのかが、分かりそうな場面だな。

 面倒なことになる前にさっさと切り上げたほうが良い雰囲気だよな。


「とりあえず。俺は元々一人だし、お前も一人だ。ミーアの所に入れてもらえ。ミーアも、俺とパメラが一緒が嫌なら、パメラをパーティーに入れて置いたほうが良いだろ?」


 パメラも一応ヒロインなわけだしな。

 知らない相手とはいえ、主要メンバーであるパメラの現状からしても、離脱するのは避けておいたほうがいいかもしれない。

 それにミーア達は戦力としては低いから、補強になるのであれば居たほうがいい。


「あのさ、勝手に決めないでもらえる? パーティーのことならこのリーダーの私を通してからにしてよね」


 レフリアがリーダーだと? 本当に大丈夫なのか?

 ゲームと現実は違うと思い知らされたが、本当にレフリアがリーダーで良いのか?

 などと疑問を持ったが、ハルトの様子からしてもレフリアには甘い。性格からしても妙に納得してしまった。

 初めての実戦だというのも分かるが、現時点においてはハルトがリーダーのほうがましだと思う。


「僕は良いと思うよ。パメラさんがいいのであれば」


「ハルト。またそうやって……」


 男ならともかく、女の子が入るのはやっぱり嫌なんだろうな。

 そんな事言う前に早く告白でもすればいいのに。ハルト君は言ってくれるのをずっと待っているのだよ? 今はどうか知らんけど……

 というか、この話に俺は関係がないだろ?


「ふぅ、食った食った。ごちそうさまっと。そっちの話は俺には関係ないから、後は好きにやってくれ」


「今日あったことを皆に話をしても良いんですか?」


「お前は学習しないんだな。話をしたところで無駄無駄。好きにすれば? 信用してくれるわけ無いだろうがな」


 パメラは視線を落とした。今の言い方からして、俺が自分のことを隠していると思っていたのだろう。

 たとえそれが真実だろうと誰も理解を示さない。理由は俺だから。

 出来損ないがそんなこと出来るはずないだろうと、そこで話は終わってしまう。

 ミーアとハルトはわからないが、レフリアは確実に信じないだろう。


「もういいだろ?」


「アレス様も、いえ。私をパーティーには」


「無理だ。諦めろ、ついでに……いや何でも無い」


 婚約も諦めろと言いたいところだったが、レフリアがいる手前、余計な面倒事が増えるから言うのを控えた。

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