#15 罪と罰
翌日登校すると教室の空気は一変していた。
昨夜、帰宅してからも何とかカオリと話しをしようとしたが、LINEはブロックされているし電話をかけても出て貰えなかった。
授業が始まる前に教室で少しでも話せないかと思ったけど、話しかけても無視された。
それどころか周りの人たちまで私を睨んだり舌打ちしたり、私への態度が明らかに昨日までと変わっていた。
最初は何が起きているのか解らなかった。
ただ解ったのは、私はクラスの中で今孤立しているということだけ。
何があったのか聞こうとしても、みんな目を逸らすか舌打ちだけして無視する。
どうにか聞き出そうと廊下に居た山川くんを捕まえて、しつこく問い質したらようやく喋ってくれた。
でもその内容には愕然とさせられた。
昨夜LINEで私がブロックされたあとグループチャットでは、私が中学時代に万引きの常習犯だったとか気に入らないクラスメイトをイジメて登校拒否に追い込んだとか、全く事実無根の嘘情報が語られていたらしい。
山川くんにも「そんなヤツだと思わなかったよ。お前サイテーだな」と軽蔑された。
『そんなことしてない!』と訴えても聞く耳もって貰えなかった。
もうどうしていいのか解らなかった。
その日はずっと一人で過ごすしかなかった。
昼休憩は食欲無くて自分の席で顔を伏せて泣きそうになるのを耐えてた。
ふと今は席に居ない隣の大森タローのことが頭に浮かんだ。
ああ、そうか。
大森タローも今の私と同じ状況だったんだ。
身に覚えの無いことで責められ、理不尽にクラス中から悪意を突き付けられたんだ。
そして私は先頭に立って彼を攻め立てたんだ。
彼はなに1つ悪くなかったんだ。
彼に謝らなくては。
そう思い立ち、教室から出て彼を探した。
彼は空き教室に居たが、真田マリさんと二人で居たため部屋へ入るのは躊躇われた。
廊下で身を隠して中の様子を伺っていると、中の会話が少し聞こえてきた。
「なんでタローくんは嘘の噂広められても平気なの?」
「平気じゃないよ、平気じゃないけど平気なフリするしかないじゃん」
「もう、そういうトコだよ!」
二人の会話を聞いて、涙がこぼれてきた。
逃げる様にその場を離れてトイレに駆け込んだ。
大森タローは最初から今でも正しいことしかしていなかった。
恋人だったカオリに対しても、怒ることなく語りかけ続けてたんだ。
クラス中から責められても、無実の彼は堂々としていただけなんだ。
非常識だと解っているけど、彼なら私を助けてくれるかもしれないと思ってしまった。
そして、そんな彼を信じて傍に寄り添っている真田マリさんを羨ましいと思ってしまった。
そんな浅ましい自分に嫌悪してトイレで何度も吐いた。
もうこれは自分への罰なんだ。
誰かに助けてもらおうなんて思ってはいけない、自分は罪を償わなくてはいけないんだ。
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