#16 終わらない贖罪





それからはひたすら耐えた。

何を言われても受け入れる覚悟で過ごした。


まだ大丈夫まだ大丈夫、まだ私は耐えられると自分に言い聞かせた。


大森タローは言っていた。

「平気じゃないけど平気なフリするしかないじゃん」


だから、私もそうしたかった。

彼みたいに強くなりたかった。


山川くんから「俺と吉川さんが付き合ってるのが気に入らないからって、吉川さんに嫌がらせするの止めろ!」と怒鳴られた時も何も言い返さずに黙って耐えた。


もちろんカオリに対して嫌がらせなんてしてないし、そもそもカオリと山川くんが付き合ってるなんて初耳だった。

あまりの理不尽さに唖然としたが、でも自分が大森タローにしたことを思えば耐えられた。



そうやって過ごす内に、少しづつ教室の空気も変わり出した。


大森タローへ向けられていた悪意が急に私へ向けられたことへの違和感を感じた人が居たのかもしれない。

実際のところカオリによって作為的に標的が私へ切り替えられたのだろう。

今になって思えば、大森タローの時、確かにLINEでのカオリのあの煽り方はあからさまだったと思える。

私に対しても同じ様に強引な煽りが行われたことが想像できる。


山川くんの様に盲心的にカオリを信じる人ばかりではないのだろう。


クラスの何人かは大森タローに普通に話しかけるようになったようだ。

これでいい、これでいいんだ。と希望が持てる様になった。




だけど、私への罰はまだ終わらなかった。

カオリはまだまだ私を許すつもりは無かったんだ。






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