おんぼろ宿

入ったはいいが中は酷く臭って、自慢の耳で探れば人の息の音がするような気がする。


大雨でばれなぇでくれと思いながら少しばかり辺りを確認すると、床で病人が一人寝ているらしい。


他に気配は感じねぇがこりゃ今夜が山にちげぇねぇ。


流行り病だと困るが雨が凌げるだけ外で雨に打たれるよりはましだろう。


気持ち悪いがとっとと裸になって、床らしき板にごろりと寝転がらせてもらうことにした。


病人から布団をぶんどろうかとも思ったが、いくらなんでもそりゃ仏さんが許しゃしないし、

生憎この汚物の匂いは病人からするらしい。


あぁ、最悪だ。寝れやしねぇと思ったが、雨に打たれて体は限界だったらしく、

知らねぇうちに寝落ちたようだった。

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