第5話 エピローグ


「あの・・・ですね」


 スポットライトが、とある人物を照らす。卵型の顔に、ベージュの軍服。パンドラズアクターだ。ライトの周りは暗く、パンドラズアクターのみが唯一、視認できる存在であった。


「アインズ様からあの後、『お前の案は見事だったぞ』と、お褒めの言葉を確かにいただきました。いただきましたよ?ええ」


「でも、なんで私・・・呼ばれてないのでしょうか・・・」


 普段の彼とは違い、体育座りでブツブツと何かを独白する様は、奇妙を通り越して恐怖である。しかも、声のトーンがいつもより低い事により、輪をかけて不気味だ。


「私、久方ぶりに?自分の意思とかではなく? 公的に? 宝物庫をでれるのかな〜とか思って服装とか、ポーズとか研究してたんですけど・・・まあ、服はこれ一着しかないので、こういったかっこいいポーズの研究しかしていないのですが」


 くねくねと、体育座りのまま動くパンドラズアクター。腕が顔のすぐ横から出現し、足が腕の真ん中から突き出ている。


「アインズ様に聞こうかな、と思いもしたんですがね、それはそれはものすごい喜びようで・・・「よかった~」とか、「ホワイト万歳」とか、意味は解りませんが、多分それどころじゃなかったというか・・・」


 ここで言葉を切り、体のポーズを戻す。その視線は、ある一点に注がれている。


「この、ちび守護者さん、達もよく働いてはくれるんですけれどもーー」


 そこまでパンドラズアクターが言い切ると、瞬く間にスポットライトは掻き消え、宝物庫が出現する。


 というか、そもそもスポットライトなど最初から当たっていない。自分の世界で引きこもっていただけの、パンドラズアクターの想像の産物だ。


「パンドラズアクター様、この箱はどちらに?」


 一部始終を見ていたため、ちびアルベドは若干引き気味だ。


「あー、それはですね、上から2番目のところにとりあえず置いといてください。あ、アウラ嬢、それは落とすと危ないので、気を付けて」


 ちび守護者と話すため、最近は屈むことが多い。そのまま宝物庫をぐるりと見渡すパンドラズアクター。


 元々は広かった宝物庫だが、今では七名で管理していることから、とても賑やかだ。直接の配下がいないパンドラズアクターにとっては、新鮮な経験だった。


(アインズ様は、あの時の会話からここまでお考えになっていたのでしょうか・・・?私に配下を与える、という事も計算の上で?)


 やはり、アインズ様は偉大な御方ーーパンドラズアクターが改めて造物主であるアインズに感謝する間も、今は、ない。


「お嬢様方!それは危険ではないですが、投げて遊ぶものではありませんッ!!」


 部下と働く。アインズ様も普段からこのような気持ちでいらっしゃれば、良いのですがーー


 


 Fin

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オーバーロードIF 激震のアンデッド・デスマッチ編 ナガシメサメハ @nagsimesameha

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