第16話 ローズワルト

ヴィンセントの師匠にあたる人は、これまた痩せ気味の細身で、現在は、顔が青い。どう見ても、健康を害してる。

「良かったですよう…!ここにいてぇ~。気づいたらいないんだから…!」

間延びしたような声だ。

壮年の魔法使いみたいなロープを着ていて、もしかしたら、魔法使いかな?

我が家の中二病が反応。

「ひょー!!魔法使いぽいっ!」

「期待に沿えず、申し訳ないですが~、僕は、研究者…学者ですよう。そこにいる弟子、ヴィンセントの師匠です~。ローズワルトです~以後お見知りおきを~。」

京介の興奮も気にせず、自己紹介する彼。

「師匠…気づかれたのですね?」

「何言ってるんですかぁ~。僕だって、これでも、大人ですからねー。聞いたところによれば、親しくて頂いてる方々がいると仰っていたので、もしかしたらと来てみました~。」

「ヴィンセントくんを今、帰そうと思っていたんです。お迎えが来てくれて良かった。」

「お邪魔して…グーッ。」

盛大に腹を鳴らす彼にあらあらと食べて行きなさいと中に招き入れる。



「美味しいですねえ~。ほう。山芋と言うんですねえ。」

見た目に反して、食べるので、恐らくは、夢中にならなければ、食事は、人並みに食べれるのだろう。にも関わらず、こんな細身で、青白いのは、食事を疎かにし、就寝すら疎かにしてるから、こうなのだろう。

「研究って何を研究してるの?」

「私の専門は~主に…植物ですね…。薬になる植物から毒にもなる植物の発見及び、解明等を研究してるのですよ~。各地を回って、そこに生息する植物を採取する。これは、趣味ですがね。」

世には、見たこともない植物ばかり…。

「ローズワルトさんの目は不思議な目をしてるね。」

煌太が言うと、ローズワルトはにっこり。

「わかりますか?私は少数部族出身でしてぇ~南の地方の小国なのですがね。目に、特徴のある星形があるんですよ~。近寄らないと、見えないのですがねー。」

「そういえば、ヴィンセントの目にもあるね。」

「師匠とは同じ出身なんです。」

へえー。

「夕飯まで頂いて、弟子共々、ありがとうございます。干し茸だけでは、足りませんよね~でも美味しいですねえ~。」

「師匠…!」

止まらない手つき。

まるで、餓えた人にご飯を与えた気分だ。

ローズワルトの場合は、半分、自分のせいではあるが。


煌太が悪かった。あれこれと、ローズワルトに質問の限りを聞いてしまったから。

覚悟もなく、研究対象の話を振ってはならない。あの間延びしたような声は、どうしたのか。

「いい質問ですね!煌太君。人にはあまり、見向きもされませんが、雑草と言うのは、中々、興味深くて、この家の回りにもあるようなそこらの雑草も様々ですが、特に、雑草のキングと呼ばれるガルツィレオは最たる…!」

「ガルツィレオ?大層な名前だね!葉っぱなのに!」

「雑草オタク…!」

引いてる京介に間一髪、雛弥が、突っ込む。

「あんた、引く権利はないわよ。あんた、興奮すると、ああよ?」

「うそっ?」

京介は、大概、冒険者に興奮するので、ハラハラする時もある。


エキサイティングをしてる師匠を横目に、チヨが、お浸しの作り方を伝授しており、熱心に聞いてるヴィンセント。

「これは味がさっぱりして、美味しいですよね。」

「健康的だからね。」

尚弥が、ローズワルトに夜はもう遅いからと寝泊まりを提案。

恐縮する弟子に、笑う師匠。

師弟関係も大変だ。

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