第9話 手先が器用だと助かるはなし

持ち前のコミニュケーションを発揮した我が姉、雛弥は、要らなくなった角材等の廃材を藤巻家の特有である年配の方々に、優しくして貰える質が、こちらでも、発揮された。

「ふう。借りた台車は、あとで、返すとして!これだけ、貰えたら、まあ、なんとかなるでしょ!」

「お姉ちゃん。流石ー!」

「まあね。でもこればかりは、運だわ。聞いた話だとすれば、この先の森で、採取することは、どうも冒険者だけでなく、やっていいと聞いたから、良いことを聞いたわ。あたしが採取して、あんたが作るのよ!」

「へい!」

採寸する弟に、微笑む。

図工の成績は抜群で、物を作らせたら、プロ間違いなしの腕前。

「自給自足みたいよね。今なら某番組に、出れそうだわ。」

「出来そう(笑)。」

集中すると、止めるまで、やめない弟を気遣いながら、雛弥は、他の作業に移る。


おばあちゃんが、ゆっくりと、針を通していく。こちらのやり方は知らないが、手芸はお得意。

ボタンの外れた服のボタン付けを快く、引き受けた。

「お客様にごめんなさい。」

「いやいや。」

リンダは将来、お針子になりたいようで、練習中らしいが、まだ、覚束ない。

それを聞いた祖母は、ゆっくりでいいんだよと、取れかかったボタンを縫い付けていく。

「リンダは、将来、お針子になりたいって言ってるのだけど、私も我流で、教える暇がなくて、ありがとうございます。」

「時間がないと中々、思っていても…ね?」

「そうなの!家事は待ってくれないじゃない?溜まる一方でしょう!?」

「わかるわ!」

母同士が意気投合してる横で、一番下同士である煌太とイルミが遊んでる。

傍らで、祖父が慈愛の眼差しを送っている。

「へー。イルミのお父さんは、皮の職人さんなの?」

「うん。皮製品を主に使用する職人さんだよ。冒険者の人も買ってる。トラット商会の職人。」

トラット商会とは、主に皮の製品を扱ってるお店で鞄やくつなどの小物を売っている。

イルミの父は、そこで、職人として、働いてるそうだ。

丈夫で長持ちすると、評判。

「へー!」

「コータのお父さんはギルド職員さんになったの?すごいね。」

「お父さんは、事務が得意だよ!」

「へー!」

へー!とお互いに、誉め合う、ほのぼの。



尚弥は、回りの職員から説明を受け、ノウハウを叩き込む。

尚弥の持つ、おっとりとした雰囲気もあいまり、いつもよりは、殺伐としていない。

やり方を聴いた彼は、すぐさまに作業に移り、手を進めていく。

同性に嫌われることは少なく、異性からも遠巻きされない、安定の癒しを持つ彼は、持ち前のコミニュケーションで、直ぐに、溶け込んだ。

気遣いも出来る彼は、人材として、合格。

「これは、さっき、纏めた資料ですね。こっちは、計算があっていないので、計算しなおしました。チェックお願いします。」

テキパキと見た目を裏切る、仕事の捌き方が新人ではない。

「ギルド長、あの人を雇ってくれてありがとうー!」

まだ、人員の補充は、満たしてないが、尚弥が入ったことで、目に見える程の効果を出してるのだ。やったあと叫びたい彼らに罪はない。

雑務をこなしながらも他の業務をする彼に器用だな、アイツと溢すギルド長。

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