第23話 暑い夏には、サイダーでハイタッチ
俺は水野を家に帰して、俺はコンビニでサイダーを買った。
一本じゃなく、あえて二本でだ。
俺は会計でお金を払って、自動ドアを通る。
そこにはガラス窓に持たれている親友が立っていた。
「お、波留人じゃねえか」
「……やっぱり、後をつけてたのか」
「そりゃ、気になるからな。お前が女子と帰る相手くらい親友が見極めた方がいいだろ?」
「……お前なぁ」
呆れた声を出す俺に千種は、っへへ、と自分の首の後ろに両手を組む。
「で、俺の分のサイダー買ってくれたんだろ?」
「……ったく、調子がいい奴だな」
俺はビニール袋に入ったサイダーを投げて渡す。
千種は彼に片手でキャッチして、けらけらと笑う。
「サンキュー」
「はいはい、次はお前が奢れよ」
「えー? マジ―?」
「マジだ」
「ちぇー」
千種はサイダーのキャップをプシュッと炭酸がはじける音を鳴らせながら、ペットボトルの飲み口に口を付けた。
俺も自動ドアの横の窓際に立って、しゃがみこんでからサイダーを一口飲む。
まったく、心配性な親友様だ……たぶん、彼女との会話は盗み聞きしていたんだろう。千種はゴミ箱にもたれつつサイダーを口から離して、波留人に尋ねる。
「で? お前のことだから、何か頼まれたのか?」
「ストーカーがいるから、恋人役をしてほしいんだと」
「お、人魚姫様は人を見る目はあるんだな」
ゴク、っと千種はサイダーをまた一口飲むのを聞いて、俺は疑問に覚える。
「普通、優等生が友人もいないタイプに声をかけるか?」
「少なくとも、俺が女子だったらお前の話を聞いたら、ぜってーお前にする」
「なんでだよ」
「だってお前絶対口堅いじゃん」
「過大評価だな」
俺は千種の評価を聞いて、もう一度サイダーを飲んだ。
口の中にしゅわしゅわとした炭酸が喉の中を抜けていく感覚に浸る。
俺の言葉に千種は不満そうにしつつも、サイダーを持ってないほうの手で俺に指を差した。
「親友様の評価は素直に聞き入れろよなぁ? 少なくとも、お前、女子受けはいい方なんだぜ」
「……なんでだ?」
「あれだよ、不良が捨て猫拾うギャップ理論」
「俺はギャップはないだろう?」
「あれと近ぇってことだよ! 気づけよバーカ」
「バーカ、って言うやつがバーカなんだよ」
「お!? 言ったな!? ゲーセンでやり合うか!?」
しゅ、っしゅしゅ! ホワター!! と千種はブルースリーみたいな格闘家系の殴るポーズをする。確か、ブルースリーって香港の人だったっけか。
映画とか海外物を見たといっても、母さんには基本的に恋愛ものばかり見せられたからよくわからないんだよな。
俺はサイダーから口を話して、はっきりと千種に反論する。
「コンビニからだとゲーセン遠いだろ。却下だ」
「ちぇー……今日もコテンパンに負かしてやろうと思ったのによぉ」
「しばらくの間は、水野と一緒に帰ることになるだろうから我慢してくれ」
「じゃあ、親友様を念のために買収しとかないのか?」
にやりと、俺の見てくる親友様に溜息を吐く。
まったく、本当に千種はお調子者だな。
俺はサイダーを口から離して、千種の本音をはっきりと見抜いてやった。
「今しただろ、お前どんだけ俺ん家の砂肝の佃煮風好きなんだ」
「だってうめえもん。また食いてー!」
「じゃあ、その時はお前も何か一品持って来いよ……そうだな、ゴボウのきんぴらが食いたい」
「いいぜ、交渉成立だな!」
俺は千種とハイタッチしてから、すくっと立ち上がる。
「それじゃ、また明日」
「おう、またなー」
親友はそういうと、一人ゲームセンターの方の道なりへと歩いて行った。
「さて、不由美は今日学校に行けたのかな」
俺は鞄の位置を整えて、自宅へと帰還するためサイダーを口にしながら暑苦しい夏の空気に触れながら、一人歩いていくのだった。
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