第21話 千種に説明
「で!? 女子と帰るとはどういうことだ!?」
お昼休みが終わって、放課後に千種に問い詰められている。
俺は他の生徒たちが掃除を終わらせた自分の席で座っている。
大声で言ってくるので他の生徒の視線が刺さってくる。
みんなの前で言いたくないんだが……どうしたものか。
「いいだろう、俺も女子と帰ったって」
「どうせ女子の頼みで断れなかった、とか言うんだろ!? ジェントルマンがよぉ!!」
千種は罵倒にもなってない言葉で怒鳴る。
周囲の女子や男子が、すぐに俺たちを見るのをやめた。
ちょっとほっとしつつ、俺は千種を諭す。
「女の子はキラキラした砂糖菓子と素敵なものでできてるんだぞ? 母さんが言ってたし、女の子に優しくしないとだめだろう?」
「女子はもっとえぐいの!! マザーグースの歌みたいな感じじゃねえんだって!! 俺の姉ちゃんたちのこと知ってんだろうが!!」
「千種のお姉さんたち優しいだろ」
「お前の目は節穴か!? 節穴なのか!?」
千種には二人の姉がいる。千種の家に行った時、優しく接してくれたのを覚えている。ゲームをプレイしている俺たちにジュースを出してくれたりしたし、笑顔で気を使ってくれる優しい姉たちだなという印象だが……千種にとっては、獣なのだとか。
「お前が気に入ってるからに決まってんだろ!? あの肉食獣どもはお前目当てなの!!」
「そんなことないだろ、俺は年下だし」
「お前、恋愛には年下とか年上とか関係ねえの!」
「そうかもしれないが、千種の気持ちを汲み取って言うけど、俺は財力がないからそういう目に見られることはないはずだ。高校卒業したらアルバイトする予定だし」
「……どこで働くんだよ」
「居酒屋のアオイ、ほら、商店街の隅にあるだろ?」
「ああ、あそこか……結構海上町では人気だよな」
海上高等学校の近くにある商店街の隅にある、老舗の居酒屋だ。
木造の古臭い建物に、成人した海上町民たちの行きつけの店でもある。
千種のお姉さんたちもよく通っている居酒屋だ。
父さんが生きてた時は、俺もよく連れられて行った場所でもある。
ジョッキに入ったビールを、いつか大人になったら父さんと酌み交わす約束もしていたが、叶わないことにはなったけど……店長のおじさんが気を使って、高校卒業後に働くことを認められている。
俺はとりあえず、話を切り上げて水野のところに行くために席から立ち上がる。
「それじゃ、俺はもう行くぞ」
「……誰と一緒に帰るのかは聞いてないぞ」
「水野瑞帆とだ」
「……は!? あの人魚姫と!?」
千種の一声で、教室にいる全生徒が俺の方へ振り変える。
さっきの視線より、鋭い目線が突き刺さる。
俺は気にせずに、千種に背を向けながら軽く手を上げる。
「それじゃあな、また明日」
「は!? いや、ちょ――――――」
俺は千種が教室にいた同級生たちに詰め寄られていることを知らないまま、玄関へと向かった。
玄関で上履きから外靴に履き替えて、つま先をトントンとしながら靴を履く。
水野がやってくるまで待っていようか、一学年下だと掃除担当がどれだとかわからないし、とりあえず外じゃなくて玄関の中にいよう……夏だから暑いしな。
俺は15分ほど待つと、向こう側から他の生徒に交じって水野が誰かと話す声が聞こえてくる。
「それじゃ、私はこれで」
「はい、先生には伝えておきますね」
「ありがとうございます、では」
水野が他の女子生徒と一緒に階段を下りてくる姿が見える。
彼女は女子生徒に軽く手を振ると、俺を発見したのか笑顔を浮かべた。
「あ、青崎先輩!」
「よ、水野」
「待っていてくださったんですか?」
俺は手を上げず、口頭だけで言うと水野は首を傾げながら尋ねる。
……女子生徒の不審な視線を向けてくるのを感じつつ、気づかないふりをして水野に答える。
「今来たばかりだよ」
「そうですか、ちょっと待ってもらってもいいですか?」
「ああ」
水野は、自分の靴箱の方に行くのを見て、俺は彼女の一年生の学年の靴箱の方で水野を待つことにした。
上履きを脱ぎ、ローファーを履いて足場で靴をトントンと靴を鳴らす。
「青崎先輩! お待たせしました!」
「ああ、行こう」
俺たちは正面玄関を出て、校門を出てる。
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