ジェットコースターにご用心
さて楓がどうして未来に来たのかを話さないといけないだろう。
未来に行く前の過去の楓は友達の雪とともに新しくできた遊園地で遊んでいた。
ここに来たのは雪が失恋してそれを慰めるためだ。
朝一から並んでやっと入れた。
今日は日曜お客さんも多かったのでお目当てのジェットコースターは夕方になるまで空かなかった。それにしても暑い。こんな暑いのにみんなマスクしている。
今思えば「タイムスリップするなら未来じゃなくってコロナが流行る前の過去がよかったわ」と思う。
夕方までお化け屋敷や観覧車、メリーゴーラウンドなどを乗り時間をつぶした。
夕方に「ジェットコースターが空いています」という遊園地からのメールが入ったので急いで向かった。
最新鋭のジェットコースターは一人乗りだ。
正確には一人が乗った丸い球体がくっついている。
ソーシャルディスタンスを保ったものだ。
ジェットコースターは共感してこそ価値があるのに。。ここにもコロナの影響がでている。
友人の雪とは別の球体に入る。
一番後ろのやつだ。
視野がさえぎられて全然面白みがないんですけど。
そんな不満があったがそれでもジェットコースターは久しぶりなのでドキドキする。
やがてガタゴトと機体が動き出す。
まず初めに上に登っていく。そこらへんは変わらない。
そしてそのまま真っ逆さま。
「きゃー」と声を出す。
そこからまた上がってそのはずみで回転するコースへとうつる。
もう上がどっちなのかもわからない。
そして最後は大きな管のようなものの中へ。
管にはらせん状の溝が彫ってある。
自分が弾丸の中にはいって進んでいるような気がする。
当然スピードもあがり、ここから落ちていく。
その前に気が付いたらあの港にいた。
と。拾われた山田に話したが山田はさっきから楓からスマホを借りてそれをいじっている。
「ねえきいてるの?」
「はいはい」と空返事だ。
山田からスマホを取り上げると山田は渋い顔をする。
「あの、相対性理論ってご存じですか?」
「え、まあ。話だけなら」知ったかぶりをする
「そうなんですか?さすがアインシュタイン先生です」
どうやら山田は理系のようだ。
「で。それがどうしたのよ?」
「いえね。人間が光の速さで進んだとき時間を数100年進めることが出来るんですよ。」
「へえーでもジェットコースターじゃそこまでは無理でしょ?」
「まあ百年は無理でしょうが、おそらく数十年くらいは進んだんでしょうね」
そういうと楓からスマホを取り返した。
「で、またジェットコースターに乗れば元に戻れるのかしら?」
たいていは未来にいった同じことをすれば元に戻れる。
まあ見てきたドラマの話ではあるけれど。
「進むことはできますよ。でも戻る方法はまだ確立されてません」
「え?」
「無理です」
山田はスマホをいじるのに忙しい。
「でもドラマとかであるでしょ?」
「あれはあくまで作り物です」
「え。」
再び声を失う。
「まあこの未来で新しい人生を歩めばいいではないですか」
「バカ」といって山田のほほをたたいた。
「もう二度とジェットコースターに乗るものか」そう意思を固めた。
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