第2話 淡い想いには恋のスパイスを!
私がバーテンダーさんとそんな話をしていると入り口から1人の男性がなにやら沈んだ様子で入ってきてバーテンダーさんの前に…。
「なぁ…俺…またふられた…。」
とバーテンダーさんに静かに話かける。
バーテンダーさんは深くため息をつき少しあきれた表情をしていた…。
「またか…今日はどうした?」
男性は私の席の1つあいた隣の席に無造作に座った。
そしていきなり…
「彼女が浮気してたんだよ!しかもこの俺の熱い思いが重たいんだってよ!こんなことってあるか…こんなに想ってるっていうのに…。なぁ…親友のお前はどう思う…?」
とすがるようにバーテンダーさんに問いかけている…。
「おい…お客様もおられるし少し落ち着け…ちょっとまってろ…。」
と静かにさとした。
私は横目でその様子をちらちらみながら申し訳ないと思いながらもなんだか微笑ましくみていた…。
あの人も振られたんだ…しかも重たくてって…私と同じ?…みたい…。
こんなことってけっこうあるんだ…。
バーテンダーさんが男性の前にカクテルをそっとさしだす。
赤ともオレンジ色ともいえないとっても綺麗な色のカクテル!
「お前!またこれかよ…。俺がくるといつもまずこれだよな…まっいいけど!」
「お前はいつも騒ぎすぎる…ちょっとは落ち着け…お客様に迷惑だ…。」
「はいはい…わかったよ!」
バーテンダーさんが接客のためその場を離れたので、私はその男性のすぐ近くで飲むことになった…。
なんか落ち着かない…これ飲んだら早く帰ろう…。
そう考えいると男性が私の方をみて…
「それ…君が頼んだの?」
「えっ!いえ…さっきあのバーテンダーさんがどうぞってくれたんです…なぜですか?」
「それフローズンマルガリータ…元気出して…って意味!あいつはこういうことあんましないから気になって…君なんかあった?」
「えっと…その…それよりカクテルに詳しいですね…。」
私はとっさに別の話にすり替えた。
「こうみえて昔、あいつと一緒にバーテンやってたからな…まっ、みてのとおりこんなだし…辞めたんだ。」
「これは?なんか嫌がってましたけど…?」
男性のカクテルを指差す。
「これはアイスブレーカー…落ち着けって意味!あいつはいつも冷静にまわりをみてる…そうゆうとこすごいんだよな…。」
「へぇー!それにカッコイイですもんねあの人!」
「あいつはやめとけよ!仕事命ってゆうか…オンリーってゆうか…。」
なんかお互いをよく知り尽くしてる親友ってこんな感じなんだ…とちょっとほっこりして笑ってしまう!
「で…君…なにがあった?ちゃんと聞いてやるから言ってみな!」
覚えてた…。
でもなんで人の悩みなんかききたがるんだろう…
結局…
私は墓穴をほることになってしまった…。
「実は私もさっきここで振られて別れたとこなんです…彼氏の浮気で…。それでも好きだから許してやり直そうと思ったのに…何て言ったと思います?うざいし重たいって…!ひどいですよね!」
私は洗いざらい吐き出してちょっとすっきりした!
やっぱりこうゆうのって誰かに聞いてもらうと楽になるんだぁ…。この人には何でか本音で話せる気がする…。
男性は黙ってきいていたが、私があんまり熱弁だったためかちょっと驚いた顔をしていた。
「それは…落ち込むだろな…。」
「ほんと最低…。彼も…好きになるとなんにもいえない私も…。」
「そんなことない!人を好きになる気持ちは…すごく大事な…ことだ…うん…。俺はそれで何度も失敗してるんだけどな…。」
なんだかだんだん力なさげに話す男性が可愛く思える!
「それをあのバーテンダーさんが全部みてたってわけ…だから同情してくれたんだと思います…。」
「同情とかじゃねぇよ…あいつは…。ただたんに君に前を向いてほしいと願ってるだけだ!俺も…そう思う…。」
男性はちょっと照れながら私にいった。
「えっ、ありがとう…ございます…。」
聞いてくれた上励ましてくれてる?
ただただ嬉しい…。
嬉しいはずなのに…
なんで…なんで…
涙が溢れてくるの…?
手で涙を何度も拭う…
「なんか…なんか…ありがとうございます!私すっきりしました!ふっ切れました!でもなんで涙…とまんないんだろ…もうやだ…。」
男性は大きめのハンカチを貸してくれた。
「それでいいんだよ…失恋の時は思いっきり泣くのが1番だ!」
しばらく私は泣き続けた…。
たぶん今までの分もまとめて全部…。
男性はただただ…そばで黙って見守ってくれていた…。
周りの視線もかえりみず…。
「ありがとうございます…もう大丈夫です!」
「すっきりしたか?よかった!俺は男だからそんな泣けないが…女の子は悩みや苦しみを貯めるもんじゃない!笑顔が1番だからな!」
と笑って見せた!
この人はなんでこんなに人を癒すことができるんだろう…
思えば私の恋愛人生って癒されることなんて…なかったなぁ…。
あぁ…こんな人が彼氏だったら毎日が楽しんだろうな…。
はっ!私なに考えてるんだろう…。
さっき別れたばかりでこんなこと…やだ…。
プルプル…プルプル…プル…
「はい。それは…」
その人はおそらく仕事の電話のようで、私にちょっとごめんね…と手で合図し足早に店の外へ出ていった…。
私はぽつんと1人残された…。
「大丈夫ですか?」
とあのバーテンダーさんが戻ってきてくれた!
「はい…とても元気でました!このカクテルのおかげです!ありがとうございました!」
「元気だせたのはカクテルのせい…だけですか?」
「えっ?」
「ほかにもあるようにお見受けしたのですが…?」
私はあの人が貸してくれた大きめのハンカチに目をやった…。
「そうですね…カクテルのせいだけじゃ…ないみたいです…バーテンダーさんはなんでもお見通しなんですね…。」
「私たちはここでたくさんのお客様のお悩みに触れてきました…そんな方々に少しでも前向きなって頂きたい…ただそれだけなんですよ…。」
と天使のような笑顔を私にむけてくれる!
「あの人も同じこといってました…だから…最初から私の悩みを聞こうとしてくれてたんですね…。」
なんか目頭が熱くなってくる…。
「いいんですか?このままで…。」
とバーテンダーさんがグラスを拭きながら語りかけてくる。
「いいんです…私…もう…想うだけの恋愛は卒業しなきゃって思うんです!これからは自分を磨いて相手にもっと自分を好きになってもらう努力をしようと思います!」
これが今の私の嘘偽りのない精一杯の気持ち…。
「だったら…俺とつきあわないか?」
とすぐ後ろで声がした!
少し前に電話を終え戻ってきてて…私たちが話をしているのが聞こえていたらしい…。
「何いってるんですか?今日あった失恋女に…冗談…やめてください…。」
「冗談じゃない!」
といいながら今度はゆっくり私の隣の席に座った…。
「突然…ごめん…。」
「いえ…。」
私たちはしばらくお互いに沈黙だった…。次の言葉を懸命に探しながら…
「君は想うだけの恋愛はもうしたくないといった…なら今度は…俺に想われるってのは…どうかな…?」
その人はかなり照れた様子で私ではなく、まっすぐ正面を向いていた…。
私は戸惑った…
今まで生きてきた中で1番に…
「でも私…想われたことないから…自信ないです…。」
するとその人は私のほうに向きをかえ自信満々にいった!
「俺が君を全力で愛す!これだけが俺のとりえだからな!」
私は少し笑った…申し訳なかったけど…。
彼もまたちょっと苦笑いしていた…。
だってこんなこと…こんなに自信満々に言う人みたことない!
「今まで想うだけだったんなら…これからは…俺に想われてもいいんじゃない?」
そう彼が言ったとき…
バーテンダーさんが彼の前に静かにカクテルを差し出した…。
「お、お前!これ…なんのつもりだよ!」
バーテンダーさんが無言で…しかも満面の笑みで彼をさとすように見ている!
何かをうながすように…。
そのカクテルは茶色と雪のように真っ白な2層にわかれててとても甘い香りがした…
「カルアミルク…ですか?甘いのもお好きなんですね…。」
彼は少し緊張した表情で正面をむき私にそれを差し出した…。
「えっ?私はもう…。」
「ウォッカ…カルア…生クリームで作ってあるから女性でも飲みやすい…。」
私はこれ以上は…と少し戸惑ったがせっかくなので頂くことにした…。
「おいしい!甘くて…ちょっとほろ苦くて…まろやかな味!こんなの初めて!なんか幸せな気分に浸れますね…。」
私はもう自分が失恋したことなんてすっかり忘れていた…。
幸せに浸っている私にバーテンダーさんがグラスを拭きながらすました表情でいった…。
「ホワイトルシアン…愛しい君に…」
彼はかなり照れた様子でバーテンダーさんをにらんでいた…
たぶんこういうロマンチックなことを言うのは苦手なのだろう…
私はこんな気持ち初めてだった…
ただうれしかった…
「誰かを想う君は綺麗だ…けど俺に想われる君はもっと綺麗だ!…本気で愛しく思った…もう1度言う…俺とつき合ってください…。」
彼の照ながらもまっすぐ真剣な眼差しが私の心の迷いを消してくれた…
「私でよければ…。」
と私は彼に小声でいった…。
彼は満面の笑顔で私に笑いかけてくれた!
そんな私たちをみてバーテンダーさんもまた…優しく微笑みかけてくれていた…。
ここは魅力的な幸せのスパイスがたくさん用意された場所!
私にかけられた恋のスパイスで新たな恋はもうとっくに動き始めていた!
今度は不思議と幸せになれる予感がするのはどうしてだろう…
バーテンに癒されてみませんか? 水天使かくと @sabosuke
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