第3話 目恋(もくれん)

目で追ってしまいます。

この気持ちを人々は恋と言うのですね。

感情に名前をつけるのは、どうにも信仰のようで私には持て余しますわ。

ほらほら笑顔はご健在でいらして、

私には住んでいる世界が違うように思えますの。

ですから恋というよりも羨望に近いと思うのですわ。


「え? 私に何か御用ですか?」


あら、天にも昇りそうな気分、心地です。

身体が温かく、いいえ、熱うなってゆきますわ。

これは愛ではないのですか。

憧れですか、恋ですか。

かれぬる恋を 想うのは いじらしいようで、淋しいようで

どこか美しいです。


私は今、この一瞬を楽しんでいるだけなのですね。

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