第33話 哀しきファシスト「暗殺の森」

 1970年イタリア映画。日本公開は72年ですが、礼によって田舎じゃ上映されず、かなり後に見ました。もちろん私の興味をそそる題材が含まれていたからです。主演のジャン=ルイ・トランティニャンのクールな演技、そして彼の人生を狂わせた男にピエール・クレマンテイ、なかなかのキャストです、ドミニク・サンダも美しかった。


 1938年、ファシズムの嵐が吹き荒れるイタリア、青年マルチェロは少年時代のトラウマに苦しみ、それから逃れるためにファシズムに傾倒する。反ファシズムの恩師を暗殺する場面の凄惨さは忘れらません。とはいえ、衣装、美術なども美しく、居京ベルトリッチ作品でもあり、見どころの多い作品です。


 ラスト付近、ファシズムも崩壊に向かうのですが、マルチェロは衝撃の事実を知ります。

 彼のトラウマの原因は、少年時代、ゲイ男性から誘惑され、彼を殺してしまったこと。ところが、彼は生きていたんですね。白髪となった彼が、相変わらず男の子に言い寄っているのを目撃したマルチェロ。

 あの男は死んではいなかった。自分は罪の意識に苦しむ必要はなく、ファシストになる理由もなかった、なんという皮肉でしょうか。すべてが崩壊を迎えるラスト、なんとも複雑な気持ちになったのでした。

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