第30話 複雑な視線「イノセント」

 1976年作品、「ベニスに死す」のルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作です、日本公開79年。


 数々の名作を撮ってきた監督の最後の作品、期待して見に行ったのですが、正直、なんだかわかりませんでした。あるシーンを除いてほとんど記憶の彼方であり、調べてはみたのですが、やはり謎の映画です。

 誰が、何がイノセントなのか。主人公トゥリオが読んでいた本のタイトルと言う説もありますが。トゥリオは、お貴族様。放蕩の限りを尽くし、愛人もいます。ちょっと改心して妻の元に戻ると、妻も不倫していた! 当然な気もしますが。


 男性貴族のたしなみとしてフェンシングをやります。と、その場で、妻の不倫相手フィリッポでを見かけるトゥリオ。

 彼のシャワーシーンをトゥリオは、暗く恨みに満ちた、そのっくせ熱っぽい目で見つめるのです。

 はっきり言って男性自身を見つめている。

 これが妻の××に、クソッ!

 て感じでしょうか。

 さすがにィチッポも視線に気づいて、不審な顔になる。

 ただそれだけのシーンです。

 当然、当時は修正されていて何も見見えません。

 しかしフィリッポを演じたマルク・ポレルは、なかなかの美男子、トゥリオ役も、まあイケメンです、どっちも髭面ですが、やはり美形は髭も似合う。


 そこだけしか覚えてない、というと、何だと言われそうですが、やはりこれは奇妙な場面。

「ガラスの部屋」で書いたように、同じ女を、男二人が共有するって、何か倒錯した感覚を覚えるのですよ、私は。

 そういう状況のある映画は多いでしょうが、本作みたく、憎い男の男性自身を熱く見つめてしまう場面は、後にも先にも、これだけ。さすがヴィスコンティ、と思った次第です。

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