第21話 キスが苦いなんて「トーマの心臓」

 ドイツのギムナジウム(高等中学)を舞台にした傑作、これも第3話でとりあげた「寄宿舎」にインスパイアされた作品。言わずと知れた萩尾望都の作品です。

 1974年、「少女コミック」に連載され、途中からですが連載終了まで夢中で読みました。

 ユーリというお堅い生徒を慕っていたトーマが自殺する。その後,、トーマそっくりの転入生エーリクが転入してきてユーリに惹かれる。

 何やら秘密を抱えているユーリ。その中身を知ってしまったエーリクはユーリに迫ります。

「キスして。でないとばらすよ、あの事」

 ユーリはむっとした顔でキスしますが、直後、エーリクを平手打ち。キスが苦いなんて、とぽろぽろ涙をこぼし後悔したのかな、もう遅いけど。


 なんだか理解できない、という最近のレビューに接し、そんなムズイかなあと疑問でしたが、キリスト教について知らないとそうなる、との意見に、なるほどです。といっても私もカトリック幼稚園に通っていた、程度の関わりですけどね。ユーリが犯した過ちは、聖職を目指す者には打撃だったろうな。ユーリという子の設定とあいまって、どこかストイックな雰囲気に私は惹かれた気がします。

 激しいシーンの多い「風と木の詩」より、こちらの方が私向きと言うか。「風木」は正直ついていけなくて、途中で読むのやめちゃいました。フランスを舞台にしたのは「寄宿舎」にならっていますが、萩尾さんはドイツが舞台。ヘッセが好きだったら、だそうで納得です。

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