第11話 三島由紀夫の自決と「剣」

 はじめて読んだ三島の小説が「剣」でした。


 舞台は大学の剣道部。剣ひとすじのストイックな主将・次郎が主人公。

 後輩の壬生は次郎を尊敬し、次郎の同級生の賀川は、迷いのない次郎の言動がうとましく、その美しい微笑に嫉妬していた。

 海辺での夏の合宿。次郎が留守のある日、皆は賀川の誘いに乗り、次郎が禁じていた海水浴に行く。壬生も同行するが、海には入らなかった。戻ってきた次郎は、壬生に尋ねる、お前も行ったのか、と。

 壬生は「はい」と答える。

 その夜、次郎が行方知れずに。結局、自死していたことが判明する。


 といった筋でございます。

 そんなことで死を選ぶのか。

 十三歳の私には、大変なショックでした。

 翌年の十一月二十五日。三島は楯の会の面々と共に市ヶ谷の自衛隊にてクーデターを呼びかける演説を行ったものの賛同は得られず、自決、つまり切腹です。介錯したのは同会の森田という青年。二人は特別な関係であったとのうわさもあります。

 昨年は三島事件からちょうど五十年ということで大きく報道されましたが、今年はコロナのこともあり、いつの間にかその日が過ぎてしまいました。


 本作は映画化もされています。市川雷蔵という、美貌の大スターが主演。彼は「剣」が出版されて間もなく映画化を熱望、三島と対談したそうです。現代では失われてしまった武士道への思いが一致したらしい。

 原作では女性は出てきませんが、映画では賀川の恋人が登場。賀川は、「なんとしてもあいつに女を知らせなけりゃならん」と、むきになり、彼女に次郎を誘惑させるのです。

「ガラスの部屋」同様、奇妙な関係です。男同士では決して交われないから、共通の女を通じて、というヤツですね。

 あ、もちろん私の妄想です。今回も妄想につきあっていただき、ありがとうございました。

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