第10話 レジェンドの原点「紫の履歴書」

 美輪明宏さんが、まだ丸山姓を名乗っていたころ、1968年に出された自叙伝です。出版されたことは直後に知りましたが、すぐには手に入れられず、じりじり。やっと読めたときは嬉しかったですね。

 10歳で長崎で被爆。部屋にいて、暗い方に何か取りに行ったのかな。その瞬間に閃光が! 窓辺にいたら命はなかったかもしれません、神のご加護があったのでしょうか。


「神武以来の美少年」、と、その美貌を称えられたのも無理はない、本書に添えられた13歳当時の写真を見て腰を抜かしそうになりました。正真正銘の美少年です!

 印象的なのは初恋の男性との交流。

 美輪さんを捕まえようとして、さっと体を交わされて、

「まるでメリメのカルメンだな」

「何それ?」

「読め」

 と、彼が「カルメン」の本を放ってよこす。

 知的な面も育ててくれた彼氏だったんですね。


 当時、三輪さんはあまりテレビには出ていませんでした。まだまだキワモノ扱いされていた時代ですね。だから、赤裸々に生い立ちを語る本書は貴重で、夢中で読んだものです。

 テレビ出演で、私が覚えているのは「スパイキャッチャーJ3」というアクションドラマに、髪はボブ、女装でゲスト出演したことです。男性だとは分かりましたが、とにかく美しかった。


 三島由紀夫と親交があったのは有名ですが、三輪さんが主演の映画「黒蜥蜴」には、三島が出ています。といっても黒蜥蜴の屋敷にある蝋人形(!)の役でしたが。あごを指でツンツンされて、きっと嬉しかったんじゃないかな。

 多彩な文化人に愛され、次第に市民権を得ていった美輪さん。レジェンドの原点を知る意味でも、この本は貴重です。機会がありましたがら手に取ってみてくださいね。

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