第9話  友情と殉愛「サイボーグ009」

 何度もアニメ、映画化されている石ノ森章太郎先生の「サイボーグ009」ですが、原作マンガのラストをご存知でしょうか。

 宇宙空間にて悪の組織を壊滅させたのはいいけど、009(ジョー)と002(ジェット)は取り残されてしまいます。

 どうやって地球に帰るのか? 当時、まだ八、九歳だった私は、はらはらしながら読み進みました。


 ジェットは大気圏突入に耐えられる肉体なのですが、ジョーは違う。ジェットひとりなら生還できるから、当然、ジョーはそう勧めるのですが。ジェットは拒否します、自分だけ生き残ることはできないと。

 ジェットにしてみれば、苦楽を共にした戦友であり同志、そのジョーを見捨てるくらいなら、という気持ちだったのか。対するジョーは、助かる命を自分のために捨てさせられない。双方、ものすごい葛藤があったと思います。

 細かいやりとりは覚えていませんが、結局、二人は身を寄せ合い、落下していきます。


 友情なのか、それとも殉愛? 少なくともジェットは満足だったような気がします。

「ジョー、君はどこに落ちたい?」

 返答はありませんでした。

 地球では、脱出した仲間たちがゴムボートで海上を漂い、夜空には流れ星がひとつ。


 そんなラストに胸を締め付けられた私ですから、「はやぶさ」初号機がカプセルを送り出し、流星のように輝き、散っていった場面には、ジェットとジョーの最期を重ねてしまい、号泣。

 そして数年前、手石ノ森章太郎展に赴いた時、なんと、あのラストシーンの原画が展示されていたのです。数十年の時を経て、こんな再会をするなんて。まさに感無量でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る