第8話 プラトニックの極み「草の花」

「死に向かってひたすらに疾走する恋」、恋愛小説の隠れた名作。

孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌。


 上記のキャッチがついている作品です。作者は福永武彦。

 初めて読んだのは高校一年、もちろん美少年と先輩とのピュアな交流が描かれていると知ったから。でも冒頭、主人公が、「ひとり孤独の重さを測っていた」といった表現があり、まだ本当のj孤独を知らなかった私は、その哀しみを想像し、涙で枕を濡らしたたものです。


 Amazonの内容紹介から引用しますね。

「研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ」

 そうそう、忍でした、主人公が愛した美少年は。

 忍が、主人公の胸にそっともたれかかる、その程度の描写しかないのですが、忍はどんなコなのか、あれこれ想像してどきどきしました。

 ショパンは甘いとか甘くないとかいう会話。当時、ショパンは少し聞いた程度で、判断はつきかねましたが。歳月を経た今は、こう言えます。ショパンには甘美な曲もあり、厳しい作品もある、と。


 出版は65年前ですか、不朽の名作ですね。何故いままで読まなかったのか後悔、なんてレビューも。福永氏は、この作品だけは実写化を禁じたそうで、その気持ち、わかる気がします。

 プラトニック・ラブという言葉は死語、らしいのですが。プラトンが唱えた少年愛(プラトン的恋愛)も想起されますし、忍と先輩との愛は、プラトニック、と呼びたいのです。

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