後悔する②
時は飛んで、学校が始まって6ヶ月。
進展なんてもんはない。
夏も過ぎて体育祭の時期に差し掛かった雨の日。
彼女が休んだ。
相も変わらず目で追うことしか出来ない僕はまた風邪かなと。
しかし、その予想は担任の言葉によって覆される。
昨日の放課後、誰か彼女を見てないか、と。
耳を疑いつつ話を聞くと、昨日から家に帰っていないらしい。
クラスメイトも何も知らない。
隠している素振りもない。
今日1日気が気でなかったことは言わずもがなわかるだろう。
そうして1日、2日、3日.......気付けば1ヶ月が経とうとしていた。
いつしかいないのが当たり前となったクラスは僕以外の誰も彼女を気にかけている感じがしない。
いなくなってから6週目が経とうとした時、不穏なニュースが世間を騒がせた。
見知っている名前が流れるテレビを消し、雨の中、学校へ行くと案の定の空気感。
SHLで担任が一件について語ることはなく1日が終わった。
それから2ヶ月、雨が多いのか、単に雨の記憶と彼女の記憶が結びついてしまっているからか、何度も何度も雨が降ると彼女を思い出す。
なぜあんなことを.......言ってくれれば聞くだけでものったのに.......けど、そんな間柄ではないな.......。
と自問自答を繰り返していた。
真相はわからない。
そんなことを思い出しながら彼女の前に立つ。
「詩織さん.......。」
ふと、彼女の名前を呟いてみる。
そこにいるような気がして、そこにはいない。
「今、こんなことを言っても意味は無いかもしれません。」
目の前に彼女がいるように。あるいは、自分に言い聞かせるように。
「もしも、ここにいて、聞いているなら、いつか、これの、返事をください。」
一言一言噛み締めるようにつぶやく。
「いや、やっぱ、会ってくれるだけで大丈夫です。」
思いなおして早口でそう返し、小さく息を吸う。
「ずっと好きでした。」
ただ冷たい雨の中、僕は告白しなかったことを後悔する。
静かに響く雨の中で 紅華 @Akai-hana
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