やさしいひと



優しい人が、大丈夫もなんでもないよも言わないのが辛い。

辛いも痛いも大丈夫じゃないも平気も何も言わない。言ったら心配するでしょと笑って僕の前ではいつも普通に見える。


優しい人は、僕の事を優しいと言って、心配掛けたくないのと笑って謝る。いつもごめんねって。

僕はその度言葉を飲み込んで、僕の頭が足りなくてごめんなさいって心の中で謝る。


僕は馬鹿だから、君が辛いとか痛いとか思っていても、全然気付けなくて。時々、最近は大丈夫なのって僕から聞いて、そこで初めて君の大丈夫って嘘を聞いて、何も出来ない後悔ばっかりして。


僕は頭が足りないから、話を聞くぐらいしか思い付かなくて。

頭の足りない僕に、君がなんでか謝って。


痛いも辛いも苦しいも出来れば全部言ってほしい。限界が来て消えそうな声でしんどいなんて言う前に。明るい話はしなくていいよ。

言って。

僕のこの言葉は、今日も泡みたいに喉元で消えた。

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