section13 梅雨

6月中旬…梅雨だ


雨はほぼ毎日降っていて湿度も高いのでジメジメしている…正直嫌な時期だ


「あーいてて…筋肉痛だ。」


雨の日は一応室内練習場があるが他の部活と曜日で交代制のため被ったら校舎で筋力トレーニングの時がある


「次の部活は2日後か…大丈夫なのか?俺ら」


大聖はふと心配になった。この学校の方針として部活は週4日以内とされている。おそらくほかの学校では毎日のように練習しているだろうに


「まぁ自主練で補えばいいんじゃないか?」


自分で肩を揉みながら目河が答える


「それもそうだな…」


それにしてもキツかった


サーキットトレーニング5周に階段ダッシュ、仕上げに間走

おかげで筋肉痛だ


「しかし梅雨はなー…」


「俺も好きじゃない」


「好きなやつなんていないだろ」


そんな会話をしながら教室へ向かっていくのだった



…放課後


(あ、雪菜だ)


大聖が職員室へ向かう途中で図書館で雪菜を見つけた


(ちょっと行ってみるか)


「雪菜」


大聖が声をかけると


「…あ」


「あぁセツナか」


「………」


あたりだ。人と話すのが得意じゃないからか顔を赤らめて俯いている。


「…どうかしましたか?」


小さい声で雪菜が答えた


「いや、用事って訳じゃないんだけどいつも屋上にいるのに今日は図書館なんだなって」


「…雨で…」


そりゃそうか。雨が降ってたらさすがに屋上には居られない


「え…えと…実は…傘をさして…屋上に行こうとしたんですが…」


そこまでしようとしてたのか…



「ところでさ、この前の物理のテストどうだった?…俺は赤点ギリギリだったけど…」


とりあえず適当な話でもしてみることにした


「……えーと…その…」


「うん」


「……89点…でした」


「マジか!すごっ」


「ええっ…で…でも…」


セツナの顔がまた赤くなった


「……あと一点で…」


「ああたしかにあと一点で90だな。そういう意味では惜しい点数だけど。でもあれ確か平均61点とかだろ?そう考えると高いじゃないか」


「……はい…」


「今度のテストの時物理教えてくれないか?」


「…え?…」


雪菜は少し驚いたような顔をしたが顔は赤いまま


「いや…出来ればでいいんだけど…」


なんかこっちも恥ずかしくなってきたぞ…


「……です…よ…」


「へ?」


一段と小さくなった雪菜の声


「………いい…です…よ…」


「ありがとう!じゃ今度のテスト頼んだよ」


よし、これで赤点ギリギリはないかもしれない。


「ここ図書館ですよー静かにー」


どうやら喋りすぎたみたいだ…司書の先生に注意されてしまった…


「じゃあまた」


「………あ、はい……」


さて…次の物理は頑張るか



……一方


「なあ俺思うんだ」


目河が久甫と藤村に問いかける


「大聖ってさ、篠宮さんのこと…」


「ズズズー…あぁ俺の直感ではあると思うぞ!」


藤村が飲んでいるのはバナナシェイク。うちの学校の購買に売っている


「やっぱりそうか。でもあいつさ昔から思うけど…自分自身で全く気づかなくないか?恋心ってやつに」


目河が珍しく大真面目な表情をしている


「バリッ……まぁ…そうだな」


久甫が食べているのは煎餅。これも購買に売っている…ていうかさっきからどうでもいいなこの情報


「多分3回だ!ちなみに1回も自覚したことないとおもうぞ多分」


珍しく藤村も真面目な顔で話している


「あぁ。普通人から向けられる好意に気付かないってのはあるが自分自身で気付かないのはあいつぐらいだろ」


「たしかに!」


「だってわざわざ屋上まで行ったり…今日だって本読まないくせに図書館に行ったし…これはもうそうだろ。だから思うんだ」


目河が握りこぶしを机に振り下ろした


「天理大聖に恋愛感情を自覚させよう」


「おおー!ってどうやって?」


「それはこれから考える」


「なぁ…ひとついいか?」


「どうした陽平」


「それ…考えるっていっても…俺ら誰か1人でも彼女出来たことあるやついるか?」


「?!」


「?!」


周りの空気に電撃が走った。

そうだ俺らは恋愛のことなんて全然考えたこと無かった…小学校でも中学校でも

そんな俺らで大聖の手助けをするのは…


無理だ



「よし…やめた。いつか気づくだろ」


目河は放棄した


「うん」


2人も放棄した


こうして3人の珍しく真面目な会議は終わった


to be continued



…今回は完全に茶番ですね。

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