section12 VS南雲高校⑤

カキィン



打球は中弾道で伸びていく

仲林がツーシームを完璧に捉えた


左中間の深いところまで打球は伸び、さらにライナー性のため鋭く抜けていった


「いけー!」


「セーフ!」


仲林の走者一掃のタイムリーで4-4の同点に追いつく


「よっしゃー!」


流れはまた魚川に来ていた


ここで打席には4番の目河


そのときマウンドには南雲の内野陣が集まっていた


「飯代…今日の俺のツーシーム…」


「いや、ツーシーム自体は大丈夫だ…まぁ立ち上がりが安定しないのはいつものことだろ?」


「あぁそうだな」

サード勝代が続く


「……ぐぅ」

深川はぐうの音もでない…いや、ぐうの音だけでた


「ま、俺たち1年生だぜ?あと2年もあれば立ち上がりだって良くなるだろ…さ、切り替えてけ、まだ9回の攻撃もあるし大丈夫だ。俺のホームランで決めてやるよ」


飯代は決まったと言わんばかりの顔をしている


「飯代、お前打ったことないだろ…あぁまぁ今なら風強くなってきたからたまたま入るかもな」

浅霧がツッコむ


「ぐ…さぁ行くぞ!こっから守るぞ!」


「あ、こいつそらしやがった」


南雲の内野陣がそれぞれの守備位置へ戻る


初球…



ズバァァン


インコースにストレートが刺さる。さっきまでとは比べ物にならないぐらいの威力だ


(うおっ…マジか気合い入りやがった…でも打たないと明日の新聞が…)




(カーブ!)


カキィン


(しまった!)


打球は高々と上がってしまった…しかしそのとき!


「あっ!」


風に流された打球に浅霧が惑わされ…落ちた


「よーし!」


この間に仲林は3塁へ


一三塁となる


「おっと浅霧?」

飯代がここぞと言わんばかりに煽る



「…すまない、次は捕る」


「おう、頼んだぞ」


打席には五番の原口


カキィン


(うわっ!)


さらにキレの上がったツーシームを引っ掛けショートゴロ


「ランナー来てない!ゲッツー!…!ランナー来たぞ!」


仲林がゲッツーの間にホームへ!…かなり際どい


「このっ!」


鋭い送球がホームへ


「セーフ!」


仲林がタッチをギリギリ避けホームベースをタッチしていた


「…あぶねー…俺じゃなかったらアウトだな…」


「よっしゃー!5-4!」


魚川が勝ち越した


その後は調子の上がった深川に久甫が三球三振を食らう


そして回は9回


バッターは浅霧


「初球からいけー!」


(…カーブ!)


ガッ


カーブを引っ掛けファーストフライ

ワンアウトだ


「浅霧ー?」

飯代がまた煽る


「…ほんとにすまん」

そろそろ浅霧のメンタルが壊れそうだ…


五番の沖田が打席へ入る


(後…2人か)


1球目…

カキィン

ストレートを思いっきり引っ張られるがファウル


(…いっぽ間違ったら…ホームランじゃん…)


さすが1番打率の高い打者だと痛感できた


2球目…チェンジアップでカウントをとる


「追い込んだぞー!」


(よし…)


サインは低めに外れるカーブ


(いけっ…!)


これを沖田はしっかりと見極めた。さすがの選球眼だ


(こいつ…今まで対戦した中でも相当なレベルだ…)

やはり沖田のレベルは高い。割と浅霧のようなパワータイプのバッターより沖田のような確実にミートしてくるアベレージヒッターのほうが厄介だ


(…カーブ。まぁそうだろう)

久甫はサインに頷く


ビュッ


カキィン


レフト方向へ鋭い打球。しかしこれはファウル


(…フー)

久甫は完全に集中モード


(いけっ…!)


カキィン


「センター!」


打球はセンターの仲林の真正面。センターライナーでツーアウト


(…あぶねー完全に捉えてるじゃん…あいつ…)


「勝代ー!うて〜!」


(さて…勝代か沖田に比べれば…怖くない…)


ストレート、カーブの2球でテンポよく追い込み




「さー!あと1球ー!」


(…インコースに…ストレート!)


ズバァァン


しっかりと決まった。勝代のバットは空を切り

スリーアウト、ゲームセットだ



「ありがとうございました!」


両チームの礼で試合は幕を閉じた



南雲|00003|0100 4

魚川|00002|003× 5











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